西田 祐樹UBE株式会社 代表取締役社長 社長執行役員 CEO
LEADER 016
LEADER PROFILE

西田 祐樹

Yuki Nishida
UBE株式会社
代表取締役社長 社長執行役員 CEO

経常だけが、届いた。

西田 祐樹

概要

公開されている有価証券報告書、決算短信、統合報告書、適時開示をもとに、その人物のキャリアと考え方を整理しました。

UBEの西田祐樹氏は、社長に就いてから1か月半後の2025年5月20日、自らを発表者として6か年の中期経営計画を公表しています。統合報告書2025に載る本人署名のメッセージでは、その計画の数字をこう述べています。

「最終年度となる2030年度の数値計画として、売上高5,500億円、営業利益600億円、ROE(自己資本当期純利益率)9%を掲げています。さらに、2035〜2040年度には売上高1兆円、営業利益1,000億円規模、ROE10%以上を目指します」

編集部が注目したのは、この人物が就任の直前まで「土台づくり」と呼ばれた3年間を、社内から見ていたことです。同じメッセージで西田氏は、前任体制の3年を「大胆なポートフォリオ改革の意思決定を行い、スペシャリティ化学企業に進化するための、いわば“土台づくり”を進めてきました」と振り返り、続けて「先人たちが築いた土台を、確かな成果につなげていきます」と書いています。

編集部が検証したのは、その1年目に何が起きたかです。

西田氏の就任1年目(2026年3月期)は、自らが発表した計画の初年度と完全に重なります。会社はその答え合わせを、有価証券報告書に自ら表で載せています。売上高は計画4,900億円に対し4,623億円、営業利益は計画250億円に対し189億円。会社は同じ報告書に「中期経営計画の初年度となる当連結会計年度は、数値目標は大幅に未達となりました」と記しました。

ただし会社が表に並べた6つの指標のうち、経常利益だけは計画に届いています。計画375億円に対して実績375億600万円。億円単位では同じ数字です。

この計画は、もともと営業利益250億円に営業外の利益125億円を足して経常利益375億円という組み立てでした。実績ではその営業外の部分が186億円に膨らみ、本業の未達分をちょうど埋めています。何が起きていたのかを、公開資料でたどります。

COMPANY
UBE株式会社
SALES
4,623億4,300万円
EMPLOYEES
7,968名
PRESIDENT SINCE
2025年4月
01

経歴

プロフィール

項目内容
氏名西田 祐樹(にしだ ゆうき)
ローマ字表記Yuki Nishida
生年月日1962年1月16日
現職UBE株式会社 代表取締役社長 社長執行役員 CEO
社長就任2025年4月1日
入社1987年4月

※生年月日・役職・略歴は有価証券報告書(2026年3月期)の「役員の状況」および同社公式サイトの役員紹介ページに基づきます。ローマ字表記は同社公式サイトの英語表記によります。

経歴

時期役職
1987年4月宇部興産株式会社(現UBE株式会社)入社。宇部ケミカル工場 精密化学品製造部
2000年2月ウベヨーロッパ出向(デュッセルドルフ)
2003年4月ウベケミカルヨーロッパ出向(マドリード)
2016年4月執行役員 化学カンパニー電池材料・ファインビジネスユニット長
2019年4月常務執行役員 化学カンパニー ナイロン・ファイン事業部長
2022年4月専務執行役員 社長補佐、生産・技術本部長、DX推進室長
2024年6月代表取締役 専務執行役員 社長補佐、DX推進室長
2025年4月代表取締役社長 社長執行役員 CEO(現在)

入社から社長就任まで38年。経歴の特徴は2つあります。

ひとつは、5年間の欧州駐在です。2000年2月にデュッセルドルフ、2003年4月にマドリードへ。統合報告書のプロフィールには「2000年から約5年間ヨーロッパに駐在」と記されています。西田氏が新中期経営計画で掲げる2つの強みのうちのひとつが「グローバル展開」であり、本人はそれを自身の経験と結びつけて説明しています。

もうひとつは、製造の現場から始まっていることです。最初の配属は宇部ケミカル工場の精密化学品製造部でした。本人が「自身の原点」と呼ぶのは、その後に携わった技術開発の経験です。

「リチウムイオン電池の電解液原料に用いられるジメチルカーボネート(DMC)を合成する独自技術『気相ナイトライト法』は、他の合成法に比べて品質や効率面、環境面で高い優位性があります。私が若手時代にその製造技術開発やプラントの立上げに携わった際に、『当社にはこんなに面白い技術があるんだ!』と感じた経験が、自身の原点でもあります」

前任は泉原雅人氏です。2019年4月に社長となり、2025年3月末まで6年間務め、現在は取締役会長(代表権なし)です。西田氏は2022年4月から社長補佐を務め、2024年6月に代表取締役 専務執行役員となった翌年に社長へ就いています。社長交代が発表されたのは2025年2月19日の取締役会で、会社が公表した記者会見要旨には本人の言葉が残っています。

「本日の取締役会において、泉原社長の後を継ぎ、4月1日付けで次期社長に指名されました西田祐樹と申します。社長を拝命するにあたり、その重責に身の引き締まる思いであり、また誠に光栄に存じます」

02

会社データ

項目内容
商号UBE株式会社(英訳名 UBE Corporation)
創業1897年6月
設立1942年3月
本店の所在の場所山口県宇部市大字小串1978番地の96(東京の連絡場所は東京都港区芝浦一丁目2番1号)
上場東京証券取引所プライム市場(証券コード4208)
資本金584億3,400万円(2026年3月31日現在)
事業内容機能品、高機能ウレタン、医薬、樹脂・化成品、機械、その他(電力供給・不動産等)
連結従業員数7,968名(2026年3月31日現在)
連結売上高4,623億4,300万円(2026年3月期)
決算期3月31日

※出典は有価証券報告書(第120期・2026年3月期)および同社公式サイトの会社概要。同社は2022年1月に「宇部興産株式会社」から「UBE株式会社」へ商号を変更しています。セメント関連事業は持分法適用関連会社のUBE三菱セメント株式会社が担っており、連結売上高には含まれません。

03

人物の軌跡

就任と同じ日に、事業がひとつ増えた

西田氏が社長に就いた2025年4月1日は、同社がドイツLANXESS社からウレタンシステムズ事業を取得した日でもあります。有価証券報告書は、この年度の売上高について「2025年4月1日付でドイツLANXESS社からウレタンシステムズ事業を取得したことによる効果はあった」と記しています。

この事業は「高機能ウレタン」というセグメントになりました。1年後の数字を先に見ておくと、2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)のこのセグメントは、売上高32億円から157億円へ、営業損益は4億円の損失から6億円の利益へと変わっています。

ただしこの変化の中身は、決算短信に説明があります。

「ウレタンシステムズ事業は、2025年4月に取得した同事業を営む各社が12月決算であるため、前年同期の連結損益には含まれていませんでしたが、当第1四半期は寄与し増収となりました」

取得した会社が12月決算のため、前年同期には損益が入っていませんでした。赤字だった事業が黒字になったのではなく、この四半期から損益が反映されたということです。前年同期の32億円・4億円の損失は、既存の高機能コーティング事業などの数字にあたります。

決定そのものは西田氏の就任前になされたものですが、引き継いだ初日から、統合という実務が始まっていたことになります。

前の3年は「土台づくり」と呼ばれた

西田氏が引き継いだ直前の3年間は、前任・泉原氏体制の中期経営計画「UBE Vision 2030 Transformation〜1st Stage〜」(2022〜2024年度)の期間でした。その3年で会社は、セメント関連事業の分社化(2022年4月)、アンモニア・カプロラクタム・ナイロンポリマーの生産撤退・縮小の決定(2025年1月28日公表)といった構造改革を相次いで決めています。

一方で、掲げた数値には届いていません。第119期の有価証券報告書に載る目標と実績の対比は次のとおりです。

項目2022年度 計画/実績2023年度 計画/実績2024年度 計画/実績
売上高5,100億円/4,947億円5,200億円/4,682億円5,200億円/4,868億円
営業利益345億円/162億円410億円/225億円400億円/180億円
経常利益310億円/△87億円450億円/363億円470億円/224億円
親会社株主に帰属する当期純利益210億円/△70億円320億円/290億円330億円/△48億円

営業利益は3年続けて計画の半分前後にとどまりました。編集部の計算では、達成率は47%、55%、45%です。

西田氏はこの3年を、統合報告書で次のように位置づけています。

「特に前中期経営計画(以下、前中計)期間の3ヵ年は、大胆なポートフォリオ改革の意思決定を行い、スペシャリティ化学企業に進化するための、いわば“土台づくり”を進めてきました。これほどの変革期に、経営の舵取りを担うことに身が引き締まる想いであり、先輩方が残した土台を、確かな成果につなげる所存です」

「土台づくり」と「確かな成果」。この2つの言葉で、自分の役割を前任と分けています。編集部では、この言い方が答え合わせの基準を自ら示したものだと考えました。土台を作る役ではなく、成果を出す役だと本人が述べている以上、見るべきは数字の結果になります。

就任1か月半で、6か年の計画を出した

2025年5月20日、会社は新中期経営計画「UBE Vision 2030 Transformation -2nd Stage-」を公表します。適時開示の発表者は「代表取締役社長 西田祐樹」。就任から1か月半後です。

計画の数値は次のように書かれていました。

「◆中期経営計画の数値計画 2030年度計画:売上高5,500億円、営業利益600億円、ROE9%/2035〜40年度目標:売上高1兆円、営業利益1,000億円、ROE10%以上」

期間は2025年度から2030年度までの6か年。前任体制の1st Stageが3か年だったのに対し、2倍の長さです。さらにその先の2035〜2040年度に、売上高1兆円という数字を置いています。2026年3月期の売上高4,623億円に対して、約2.2倍の水準です。

なお同社の中期経営計画は、毎年数値を書き換える方式ではありません。編集部が第119期・第120期の有価証券報告書の全文を検索したところ、「ローリング」という語は1件も見つかりませんでした。有価証券報告書は「『UBE Vision 2030 Transformation〜1st Stage〜』に続く中期経営計画として、2025年度から2030年度までの6ヵ年を対象とする新中期経営計画」と説明しています。区切った期間の計画を順に立てる形であり、初年度に置いた数字は、その後も比較の対象として残ります。

04

経営哲学

ここからは、西田氏が発表した計画の初年度(2026年3月期)の結果を、会社自身が公表した数字で確かめます。以下の「原計画」と「実績」の対比は、有価証券報告書に会社が載せた表からの引用です。達成率は編集部の計算です。

答え合わせ①:売上高4,900億円——実績4,623億円

初年度の売上高は、計画4,900億円に対し4,623億円。達成率94%です。

減収の理由は有価証券報告書に説明があります。ウレタンシステムズ事業の取得による増加はあったものの、樹脂・化成品でナイロンポリマー、カプロラクタム等の販売が低迷し、機械セグメントでは前年度に製鋼事業の経営権を他社へ譲渡して連結対象から外れた影響が重なりました。

買った事業の売上が加わってなお、前年度(4,868億円)を下回っています。

答え合わせ②:営業利益250億円——実績189億円

営業利益は、計画250億円に対し189億円。達成率76%です。

会社はこの水準について、有価証券報告書の「優先的に対処すべき課題等」の冒頭で、こう書いています。

「中期経営計画の初年度となる当連結会計年度は、数値目標は大幅に未達となりましたが、当社独自技術を活かし、競争力を有するポリイミドフィルム、分離膜、セラミックス、セパレータ、DMC・EMC等の製造設備への投資を行ってきました」

「大幅に未達」は、会社自身の言葉です。編集部が外から評価した表現ではありません。

ただし前年度との比較では、営業利益は180億円から189億円へ増えています。有価証券報告書は増益の理由として、前年度にアンモニア等の構造改革の決定に伴う減損損失を計上したことで減価償却費が減ったこと、アンモニア工場の定期修理が当年度はなかったこと、エラストマーの原料価格が下落したことを挙げています。構造改革の決定が、費用の面から利益を押し上げた年でもありました。

答え合わせ③:経常利益375億円——実績375億円

経常利益は、計画375億円に対し実績375億600万円。会社が表に並べた6つの指標のうち、これだけが計画に届きました。

売上高は94%、営業利益は76%、当期純利益は87%です。残る2つの指標も計画に届いていません。売上高営業利益率(ROS)は計画5.1%に対し実績4.1%、自己資本利益率(ROE)は計画6.8%に対し実績5.7%でした。経常利益だけが100%です。

答え合わせ④:届いた利益は、どこから来たか

経常利益は、営業利益に営業外の損益を足したものです。その内訳を有価証券報告書の連結損益計算書で見ると、次のようになっています(単位・百万円)。

項目2025年3月期2026年3月期増減
営業利益18,04218,941+899
持分法による投資利益7,64115,448+7,807
為替差益-(計上なし)4,307+4,307
営業外収益 合計10,54024,779+14,239
営業外費用 合計6,2136,214+1
経常利益22,36937,506+15,137

本業の営業利益は189億円。そこに営業外の収益248億円が乗り、営業外の費用62億円を引いて、経常利益375億円になっています。営業外収益の中で大きいのは持分法による投資利益154億円と為替差益43億円です。持分法による投資利益は前年度の76億円から約2倍に増えていますが、この増加には前年度に一度だけ生じた損失の反動が含まれます。為替差益は前年度は計上がありませんでした。

会社の説明も同じ内容です。

「経常利益は、営業利益の増益に加えて、前連結会計年度に計上したエラストマー事業を営む持分法適用関連会社の解散決議に伴う持分法投資損失が当連結会計年度は発生しなかったこと、さらに為替差益が増加したことなどから、増益となりました」

ここで、計画そのものの組み立てに戻ります。計画は営業利益250億円、経常利益375億円でした。差の125億円は、営業外の利益として最初から見込まれていた分です。

実績では、この営業外の純額(営業外収益から営業外費用を引いた額)が186億円になりました。計画が見込んでいた125億円より61億円多い水準です。そして営業利益の未達は、計画250億円に対し189億円で61億円でした。

編集部では、この一致を「本業で足りなかった分を、営業外の利益が同じ額だけ埋めた」と読みました。経常利益が計画どおりに見えるのは、営業外の上乗せが計画の想定を超えたためです。

答え合わせ⑤:その利益の相手は、2022年に手放した事業

持分法による投資利益は、出資先の利益のうち持分に相当する分を計上したものです。同社の持分法適用関連会社のうち、有価証券報告書が「重要な関連会社」として要約財務情報を開示しているのは1社だけです。UBE三菱セメント株式会社です。

項目(百万円)2025年3月期2026年3月期
UBE三菱セメント 売上高561,037538,359
同 親会社株主に帰属する当期純利益31,63125,323

同社は、UBEが2022年4月1日に吸収分割でセメント関連事業を承継させた相手です。有価証券報告書の「関係会社の状況」では、UBEの議決権の所有割合は50%、投資額は1,726億71百万円と記されています。

この会社の売上高5,383億円は、UBE本体の連結売上高4,623億円より大きい水準にあります。持分法適用のため、UBEの売上高には計上されません。

UBE三菱セメントの当期純利益253億円に議決権の所有割合50%を当てると約127億円です。持分法による投資利益154億円の内訳は有価証券報告書に記載がないため、この127億円は編集部の推計にとどまります。ただしセグメント情報では、持分法適用会社への投資額の調整額1,813億円が「セメント関連事業の投資額」と説明されており、持分法投資の中心がこの1社であることは資料から読み取れます。

編集部では、ここに構造の入れ替わりを見ました。会社はスペシャリティ化学企業への転換を掲げ、セメントを本体の外へ出しました。その外へ出した事業からの利益が、計画初年度の経常利益を計画どおりの水準に保っています。

答え合わせ⑥:前の3年と並べると、達成率は上がっている

未達という言葉だけで1年を測ると、見落とすものがあります。営業利益の達成率を4年並べると次のようになります(達成率は編集部の計算)。

年度計画実績達成率社長
2022年度345億円162億円47%泉原氏
2023年度410億円225億円55%泉原氏
2024年度400億円180億円45%泉原氏
2025年度250億円189億円76%西田氏

西田氏の初年度は、計画に対する到達度では直前の3年を上回っています。ただし2つの留保が必要です。ひとつは、2025年度の計画値250億円が前3年の345〜410億円より低く置かれていること。もうひとつは、計画を立てた体制が異なることです。同じ「未達」でも、計画と実績の距離は縮まっています。

答え合わせ⑦:2年目は、計画を下回る前提で始まっている

計画の2年目、つまり2027年3月期について、会社は2026年5月13日に業績見通しを公表しました。中期経営計画の2026年度原計画と並べます。

項目2026年3月期 実績2027年3月期 会社予想中期計画の2026年度原計画予想/原計画
売上高4,623億円4,850億円5,450億円89%
営業利益189億円235億円320億円73%
経常利益375億円375億円415億円90%
親会社株主に帰属する当期純利益239億円245億円300億円82%

会社は原計画を書き換えないまま、単年度の予想を計画より低い水準に置いています。そして経常利益は、実績375億円・予想375億円と2年続けて同じ数字です。

2026年8月7日に公表された第1四半期決算短信では、この通期予想について「2026年5月13日に公表した業績予想及び2026年5月20日に公表した配当予想に変更はありません」と記されています。

答え合わせ⑧:それでも、配当は引き上げた

同社は2026年5月20日、配当予想の修正を公表しています。株主資本配当率(DOE)の目標を2.5%以上から3.5%以上へ引き上げ、2027年3月期の配当を年160円(中間80円・期末80円)としました。前期比で50円の増配です。

有価証券報告書にも同じ方針が記されています。

「株主還元については、安定配当を基本方針とし、株主資本配当率(DOE)をKPIとして累進配当を目指しており、2026年度以降はDOEを3.5%以上へ引き上げ、将来的には4.0%への引き上げを目指しています」

計画の数値には届かない年に、株主への配分の方針は引き上げられています。編集部では、この組み合わせを「事業の転換にかかる時間と、株主への説明を切り離して扱った判断」と読みました。

第1四半期は、本業が伸びている

2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)の実績は次のとおりです。

項目(億円)前年同期当第1四半期増減
売上高1,0051,219+214
営業利益2956+26
持分法投資損益4054+14
経常利益62113+51
EBITDA89130+41

営業利益は約1.9倍です。高機能ウレタンのセグメントが売上高32億円から157億円へ、営業損益が4億円の損失から6億円の利益へ変わったことが寄与しています。前述のとおり、この変化は取得した会社の損益がこの四半期から連結に反映されたことによるものです。

同時に、構造は変わっていません。この四半期も、営業利益56億円に対して持分法投資損益は54億円。経常利益113億円のうち、およそ半分が本業の外から来ています。前年同期は営業利益29億円に対し持分法投資損益40億円で、本業の外の利益のほうが大きい四半期でした。

05

人物像

公開資料から読み取れる西田氏の特徴を3点に整理します。

引き継いだものと、自分の役割を言葉で分ける。 統合報告書で西田氏は、前任体制の3年を「土台づくり」、自分の役割を「確かな成果につなげる」と書きました。前任の判断を否定も追認もせず、役割の違いとして述べています。同じメッセージで「先人たちが築いた土台」「先輩方が残した土台」という表現を繰り返しており、構造改革の決定が自分より前になされたことを、伏せずに書いています。

自分の技術者としての経験を、戦略の根拠として使う。 新中期経営計画で掲げた2つの強み「オンリーワンの技術力」と「グローバル展開」について、西田氏はどちらも自身の経歴と結びつけて説明しています。技術力については若手時代のDMC製造技術の立上げを「自身の原点」と述べ、グローバル展開については5年間の欧州駐在を挙げて「これまでの経験を活かしながら、世界市場での存在感を高めていきたい」と書いています。抽象的な方針ではなく、自分が担当した仕事を根拠に置く書き方です。

期限を数字で置く。 2035〜2040年度の売上高1兆円という数字は、社長の任期をはるかに超える先の目標です。同時に、より近い期限も具体的に置かれています。有価証券報告書には「タイの製造設備の縮小・停止を一年前倒して2026年3月までに完了」「日本の製造設備の縮小・停止を2027年3月及び2028年3月に予定」と記されています。タイの設備は1年前倒しで完了しました。

今後の焦点として読み取れる点

  • 本業の利益が、計画の水準にどこまで近づくか。 2027年3月期の営業利益予想235億円は、中期計画の2026年度原計画320億円の73%です。第1四半期は前年同期の約1.9倍で始まっています
  • 持分法による投資利益への依存が、どう変わるか。 2026年3月期は営業利益189億円に対し持分法投資利益154億円、第1四半期は56億円に対し54億円でした。スペシャリティ化学企業への転換が進むほど、本体の利益が占める割合は上がる計算になります
  • 機械事業とセメント関連事業の上場。 有価証券報告書は「機械事業及びセメント関連事業については自立化の最終ステージとして株式上場を進める」と記していますが、時期は書かれていません(編集部が有価証券報告書で確認した範囲では、期限の記載を見つけられませんでした)
  • 6か年計画の中間点。 2025年度から2030年度までの6か年のうち、2年目が進行中です。2030年度目標は売上高5,500億円・営業利益600億円で、営業利益は初年度実績189億円の約3.2倍にあたります
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編集部総評

西田祐樹氏の1年目を、編集部は「引き継いだ構造が、そのまま数字に出た1年」と読みました。

根拠は3つあります。

第一に、答え合わせの基準を本人が先に示していたことです。西田氏は統合報告書で、前任体制の3年を「土台づくり」と呼び、自分の役割を「確かな成果につなげる」と書きました。測る物差しを外から持ち込む必要がありませんでした。そして就任1か月半で、6か年の計画と2035〜2040年度の1兆円という数字を、自らを発表者として公表しています。

第二に、その初年度の結果が、指標によって違う姿を見せたことです。売上高94%、営業利益76%、当期純利益87%、ROS4.1%(計画5.1%)、ROE5.7%(計画6.8%)。会社自身が「数値目標は大幅に未達」と書いた1年でした。会社が表に並べた6つの指標のうち、経常利益だけが計画375億円に対し375億600万円で届いています。計画は営業利益250億円に営業外125億円を見込んで経常375億円としており、実績では営業外が186億円へ61億円増え、営業利益の未達61億円と同じ額を埋めました。どの指標を見るかで、同じ1年が「大幅に未達」にも「計画どおり」にもなります。

第三に、本業の外の利益の出どころが、会社が本体から出した事業だったことです。持分法適用関連会社のうち有価証券報告書が重要と位置づけているのはUBE三菱セメント1社で、その売上高5,383億円はUBE本体の4,623億円を上回ります。スペシャリティ化学企業への転換を掲げる会社の経常利益を、転換によって外へ出した事業が支える形になっています。

同時に、1年目の到達度は直前の3年を上回っています。営業利益の達成率は、前任体制の3年が47%・55%・45%で、2025年度は76%でした。計画値の水準が下がっている点は差し引く必要がありますが、計画と実績の距離は縮まっています。第1四半期の営業利益は29億円から56億円へ増え、タイの設備停止は1年前倒しで完了しました。配当はDOE目標を2.5%以上から3.5%以上へ引き上げ、年160円としています。

編集部が最も注目したのは、経常利益が2年続けて375億円に置かれていることです。2026年3月期の実績375億円、2027年3月期の予想375億円。本業の営業利益は189億円から235億円へ増える見通しですが、経常利益の水準は動きません。本業が伸びた分だけ、本業の外に頼る割合が下がる計算になります。その入れ替わりがどこまで進むかが、6か年計画の残り4年で確かめられることになります。

2035〜2040年度の1兆円は、現在の売上高の約2.2倍です。その最初の1年は、掲げた数字には届かず、引き継いだ構造がまだ利益を支えている段階でした。

参考情報

参考にした公開情報

  • UBE株式会社 有価証券報告書(第120期・2025年4月1日〜2026年3月31日/2026年6月18日提出・EDINET書類ID S100YD42)
  • UBE株式会社 有価証券報告書(第119期・2024年4月1日〜2025年3月31日/2025年6月20日提出・EDINET書類ID S100W048)
  • UBE株式会社「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」(2026年8月7日)
  • UBE株式会社「UBEグループ新中期経営計画『UBE Vision 2030 Transformation -2nd Stage-』について」(2025年5月20日・発表者=代表取締役社長 西田祐樹)
  • UBE株式会社「UBEグループ新中期経営計画『UBE Vision 2030 Transformation〜1st Stage〜』について」(2022年5月19日・発表者=代表取締役社長 泉原雅人)
  • UBE株式会社 統合報告書2025「CEOメッセージ」(本人署名)
  • UBE株式会社「代表取締役の異動(社長交代)及び取締役の異動に関するお知らせ」(2025年2月19日)および同日の社長交代記者会見要旨
  • UBE株式会社「配当予想の修正に関するお知らせ」(2026年5月20日)
  • UBE株式会社 公式サイト(会社概要・役員紹介)
  • EDINET DB(財務推移の確認)

出典の性質について

  • 財務数値、計画と実績の対比、役員の略歴、会社概要は、有価証券報告書と決算短信という法定・準法定の開示資料から取っています
  • 本人の発言として引用した箇所は、統合報告書の本人署名メッセージと、会社が公表した記者会見要旨によるものです。記者による要約記事は使っていません
  • 同社の決算説明会には社長は登壇しておらず、説明はCFOが行っています。そのため決算説明会の書き起こしは、本人の発言としては使用していません
  • 達成率のパーセント表示は、いずれも編集部が計算したものです。会社が公表した数値ではありません。有価証券報告書の表に載る億円単位の数値から計算し、整数に丸めています
  • 持分法による投資利益154億円のうちUBE三菱セメントに相当する額(約127億円)は、編集部の推計です。有価証券報告書に内訳の記載はありません
  • 氏名の読み・ローマ字表記は同社公式サイトの記載によります

本記事は公開情報をもとにLeaders Journal編集部が独自に分析・編集したものです。