小森 俊太郎株式会社エヌアイデイ 代表取締役社長
LEADER 019
LEADER PROFILE

小森 俊太郎

Shuntaro Komori
株式会社エヌアイデイ
代表取締役社長

率を、下げなかった。

小森 俊太郎

概要

株式会社エヌアイデイの代表取締役社長、小森俊太郎氏。2015年6月に社長へ就いた。

同氏は2018年11月14日の決算説明会で、自社の中期経営計画についてこう述べている。

最終的に、2020年に売上200億円、営業利益20億円に到達するべく、努力をしているところですが、半分来た段階では順調に進んでいるというのが、現在の状況です。

この「200億円」「20億円」は、2020年3月期を最終年度とする中期経営計画「Smile(スマイル)2020」の数値目標である。編集部では、この発言を起点に、掲げた数字がその後どうなったかを有価証券報告書だけで追った。

結果を先に書くと、目標の年である2020年3月期に、営業利益率は10.8%となり、計画が置いた10.0%を0.8ポイント上回った。営業利益は19億4,000万円で、期中に修正された目標19億円を4,000万円上回っている。当初の水準である売上高200億円と営業利益20億円に届いたのは、その先だった。営業利益20億円は2年後の2022年3月期、売上高200億円は3年後の2023年3月期である。

編集部が注目したのは、この計画の目標が期中に修正されたとき、売上高と営業利益は下げられたが、営業利益率10.0%だけは据え置かれていた点である。そして計画が終わったあと、有価証券報告書に置かれた目標は「営業利益率10%以上を継続して維持」という一文に変わり、同じ文言が6期にわたって載り続けている。

率を下げなかった、というのが編集部の読みである。実際に、営業利益率はその後いちども10%を下回っていない。

COMPANY
株式会社エヌアイデイ
SALES
264億2,800万円
EMPLOYEES
1,683名
PRESIDENT SINCE
2015年6月
01

経歴

有価証券報告書(第59期・2026年6月25日提出)の「役員の状況」に記載された略歴は次のとおり。

時期役職
2007年4月当社常務取締役兼事業本部長
2010年4月当社専務取締役
2013年6月当社代表取締役専務
2015年6月当社代表取締役社長 兼 営業本部長
2019年4月当社代表取締役社長 兼 マーケティング本部長
2021年4月当社代表取締役社長(現任)

生年月日は1964年9月3日。役員データベースの記載と有価証券報告書の記載が一致することを確認した。

編集部が略歴から読み取ったのは、社長に就いた後も6年間、担当本部を兼務し続けているという点である。2015年6月から2019年3月までは営業本部長、2019年4月から2021年3月まではマーケティング本部長を兼ねた。社長専任になったのは2021年4月で、就任から6年後にあたる。

中期経営計画「Smile2020」の3年間(2018年3月期〜2020年3月期)のうち、最初の約2年間は営業本部長、最終年度はマーケティング本部長を兼務していた。

02

会社データ

項目内容
社名株式会社エヌアイデイ(Nippon Information Development Co., Ltd.)
証券コード2349(東京証券取引所 スタンダード市場)
設立1967年5月
本社東京都中央区晴海1-8-10 晴海アイランドトリトンスクエアX棟29階
資本金6億5,335万円
従業員数連結1,683名(2026年3月31日現在・臨時雇用者131名は外数)
事業内容システム開発事業/システムマネジメント事業/その他事業
売上高264億2,800万円(2026年3月期・連結)
営業利益33億7,200万円(同)
当期純利益25億200万円(同)

沿革は有価証券報告書の記載によると、1967年5月に千葉県佐原市(現・香取市)で「株式会社京葉計算センター」として設立された。1972年12月に株式会社コンピュータ・マーケティングと合併し、その後1994年10月に現社名の「株式会社エヌアイデイ」へ変更している。2003年1月にJASDAQ市場へ上場し、2022年4月の市場再編でスタンダード市場へ移行した。

03

人物の軌跡

答え合わせ①:本人が語った半年後に、目標は組み替えられた

小森氏が「売上200億円、営業利益20億円」と述べたのは2018年11月14日である。この時点で計画は折り返しを過ぎていた。

計画の目標が変わったのは、その約6か月後だった。第52期(2019年3月期)の有価証券報告書に、会社はこう記している。

前連結会計年度を初年度としてスタートした中期経営計画にて、最終年度2020年3月期においては、売上高20,000百万円、営業利益2,000百万円、営業利益率10.0%を目標として掲げておりましたが、直近の業績動向や外部環境を踏まえ、2020年3月期の目標計数を売上高19,000百万円、営業利益1,900百万円、営業利益率10.0%に修正することとしました。

編集部がここで注目したのは、3つの目標のうち2つを下げ、1つを据え置いている点である。

2020年3月期の目標当初(2017年5月公表)修正後(2019年5月公表)
営業利益率10.0%10.0%(変更なし)
売上高200億円190億円
営業利益20億円19億円

売上高と営業利益を同じ5.0%ずつ下げれば、割り算の結果である営業利益率は変わらない。会社は率を固定したまま、規模の目標を組み替えた。

答え合わせ②:目標の年に上回ったのは、その率だった

第53期(2020年3月期)の有価証券報告書に、会社は当初計画・修正計画・実績を並べた表を載せている。

2020年3月期当初計画修正計画実績修正計画との差当初計画との差
営業利益率10.0%10.0%10.8%+0.8ポイント+0.8ポイント
営業利益20億円19億円19億4,000万円+4,000万円5,900万円下回る
売上高200億円190億円180億1,700万円9億8,200万円下回る19億8,200万円下回る

※金額は有価証券報告書の百万円単位の記載を億円・万円の表記に置き換えた。差の数値も同表の記載に従った。行の並びは編集部が組み替えた。

据え置かれた営業利益率10.0%は、実績10.8%で上回った。営業利益は修正後の19億円を上回り、当初の20億円には5,900万円届いていない。なお、売上高と営業利益をいずれも5.0%下げれば率は変わらないため、率の据え置きが意思によるものかどうかは有価証券報告書からは判断できない。

答え合わせ③:会社は、達成と未達を1つの文にまとめて書いた

第53期の有価証券報告書には、計画の総括が3つの内容を並べた形で載っている。

中期経営計画の結果は以下のとおりであります。最終年度である2019年度の業績は、売上高18,017百万円、営業利益1,940百万円、営業利益率10.8%となりました。売上高は毎期増収を達成したものの、ビジネスパートナーからの人員の調達不調と、上述の各種戦略が遅延したことにより売上高は目標未達となりました。一方、収益性の向上により営業利益率は目標を達成、3年間累計では、営業利益額も目標を達成しました。

編集部が読み取ったのは3点である。

1. 売上高は毎期増収を続けていた。計画の3年間、売上高は179億1,300万円→179億6,400万円→180億1,700万円と毎期伸びている。目標に届かなかったのは伸びの幅である

2. 理由を2つ挙げている。「ビジネスパートナーからの人員の調達不調」と「各種戦略の遅延」で、いずれも規模に関わる要因である

3. 率と累計の利益は達成している。「収益性の向上により営業利益率は目標を達成」という書き方は、率が結果として上がったのではなく、収益性を上げた結果だと会社が位置づけていることを示している

3年間の累計を有価証券報告書の各期の数値で計算すると、売上高538億9,400万円、営業利益57億4,900万円になる。会社はこの累計について「営業利益額も目標を達成」と記載している。

答え合わせ④:次の計画は「未定」と書かれた

同じ第53期の有価証券報告書に、次の計画についての記載がある。提出日は2020年6月25日で、コロナ禍の最初の年である。

次期中期経営計画につきましては、新型コロナウイルス感染拡大による企業活動の停滞の影響や企業の事業環境の変化に伴うIT投資への影響が不確実であるため、現時点で合理的に算定することが困難であることから有価証券報告書提出日(2020年6月25日)現在、未定としております。今後、影響の合理的な算定が可能となった時点で速やかに開示いたします。

「目標とする経営指標等」の項にも、同じ趣旨が重ねて書かれている。

<2020年度以降の中期経営計画について>に記載のとおり、有価証券報告書提出日(2020年6月25日)現在、当該計数計画を未定としております。

編集部がここで注目したのは、計画を出さないことを、理由と再開の条件をつけて書いている点である。「算定が可能となった時点で速やかに開示いたします」という一文が置かれている。

答え合わせ⑤:置き換わった目標は、6期続けて同じ文言だった

翌期の第54期(2021年3月期)の有価証券報告書から、「目標とする経営指標等」の項に次の一文が現れる。

当面の目標としては、営業利益率10%以上を継続して維持しつつ、新しい収益源を開拓しながら、企業価値を高めていくことを目指しております。

編集部が確認した限り、この一文は第54期から第59期(2026年3月期)までの6期、同じ表現で載り続けている。複数年の売上高や営業利益の水準を掲げた計画は、この6期の有価証券報告書には見当たらなかった。

実績は次のとおりである。

決算期売上高営業利益営業利益率
2017年3月期176億8,300万円18億3,400万円10.4%
2018年3月期179億1,300万円18億2,600万円10.2%
2019年3月期179億6,400万円19億8,300万円11.0%
2020年3月期180億1,700万円19億4,000万円10.8%
2021年3月期176億8,400万円18億7,000万円10.6%
2022年3月期182億5,100万円22億2,600万円12.2%
2023年3月期204億4,900万円25億4,400万円12.4%
2024年3月期225億7,100万円28億900万円12.4%
2025年3月期249億6,800万円30億7,700万円12.3%
2026年3月期264億2,800万円33億7,200万円12.8%

※すべて有価証券報告書「目標とする経営指標等」の表に載った数値(第54期および第59期の有価証券報告書)を億円・万円の表記に置き換えたもの。

当初の目標だった営業利益20億円は2022年3月期に、売上高200億円は2023年3月期に上回っている。目標の年から数えて、それぞれ2年後と3年後である。

そして営業利益率は、この10期のあいだいちども10%を下回っていない。2020年3月期の10.8%のあと、2022年3月期に12.2%へ上がり、直近の2026年3月期は12.8%である。有価証券報告書が6期続けて置いた「営業利益率10%以上を継続して維持」という目標は、そのとおりになっている。

04

経営哲学

約束の形が、規模から率へ移っている

編集部が有価証券報告書を10期分並べて見えたのは、約束の形が一度だけ切り替わっていることである。

時期有価証券報告書が掲げた目標
第52期(2019年3月期)2020年3月期に売上高190億円・営業利益19億円・営業利益率10.0%(当初は200億円・20億円・10.0%)
第53期(2020年3月期)次期計画は未定。算定できる時点で速やかに開示する
第54期〜第59期(2021年3月期〜2026年3月期)当面の目標として、営業利益率10%以上を継続して維持する

複数年の売上高の水準を掲げる形から、率の下限を掲げる形へ変わった。編集部では、これを言葉が弱くなったとは読んでいない。Smile2020で唯一据え置かれた指標が、そのまま次の目標として残ったと読んでいる。

修正のときに下げなかった10.0%が、計画の終了後に「10%以上を継続して維持」という形で引き継がれ、6期にわたって同じ文言で置かれている。そして実績も、その水準を下回っていない。

有価証券報告書では、次期計画の再開を確認できなかった

一方で、2020年6月に「算定が可能となった時点で速やかに開示いたします」と書かれた次期の中期経営計画は、第59期(2026年6月25日提出)までの有価証券報告書には、開示が見当たらない。編集部が確認したのは有価証券報告書の範囲であり、統合報告書やその他の任意開示資料は確認していない。

この間に売上高は180億1,700万円から264億2,800万円へ、営業利益は19億4,000万円から33億7,200万円へ伸びている。

※ここで確認したのは有価証券報告書と決算説明会の書き起こしの範囲である。統合報告書やその他の任意開示資料は確認していない。

05

人物像

リーダーシップタイプ

編集部の分析では、小森氏が社長を務める期間の経営に見える特徴は「下げない指標が残る形」である。なお、以下の3点のうち本人の発言によるものは1点目の前提となる目標の表明のみで、修正・総括・継続目標はいずれも会社名義の記載である。

根拠は3つある。

1. 目標を組み替えるとき、売上高と営業利益は下げたが営業利益率10.0%は下げなかった

2. 計画を出せないときに、出せない理由と再開の条件を書いた(「算定が可能となった時点で速やかに開示いたします」)

3. 計画の終了後に置いた目標が、据え置いた指標そのものだった(営業利益率10%以上の継続維持)

3つに共通しているのは、結果として、据え置かれた率が次の目標にも残っていることである。

強み・特徴(編集部分析)

1. 目標を動かすときに、動かさない指標が残っている。売上高と営業利益を下げても営業利益率は据え置かれた

2. 達成した項目とそうでない項目を、同じ段落に並べて書いている。第53期の有価証券報告書は、増収の継続・売上高の未達とその理由・営業利益率と累計利益の達成を1つの段落に並べた

3. 担当本部長の兼務が6年間続いた。社長就任から2021年3月まで、営業本部長またはマーケティング本部長を兼務している

4. 一度掲げた水準に、あとから到達している。当初の目標だった営業利益20億円は2年後、売上高200億円は3年後に上回った

発言・記載と実績の対応

発言・記載時期その後
(本人)最終的に、2020年に売上200億円、営業利益20億円に到達するべく、努力をしているところです2018年11月14日約6か月後の2019年5月に、目標が190億円・19億円へ修正された(営業利益率10.0%は据え置き)
(会社)2020年3月期の目標計数を売上高19,000百万円、営業利益1,900百万円、営業利益率10.0%に修正することとしました2019年6月27日(第52期有報)実績は営業利益率10.8%・営業利益19億4,000万円で、いずれも修正後の目標を上回った
(会社)算定が可能となった時点で速やかに開示いたします2020年6月25日(第53期有報)第59期(2026年6月25日提出)までの有価証券報告書に、次期の中期経営計画は見当たらない
(会社)当面の目標としては、営業利益率10%以上を継続して維持しつつ2021年6月25日(第54期有報)以降第59期まで6期同じ文言で記載。実績は10.6%→12.2%→12.4%→12.4%→12.3%→12.8%
06

編集部総評

小森氏が社長を務めるこの期間を、編集部は「下げなかった指標が、次の目標になった期間」と読んだ。

目標の年である2020年3月期、計画が据え置いた営業利益率10.0%は、実績10.8%で上回った。組み替えのときに据え置かれた指標が、そのまま結果になった年だった。2018年に本人が語った売上高200億円・営業利益20億円については、当初計画との差が売上高で19億8,200万円、営業利益で5,900万円である。

そして掲げた水準には、あとから到達している。営業利益20億円は2年後の2022年3月期、売上高200億円は3年後の2023年3月期である。直近の2026年3月期は売上高264億2,800万円・営業利益33億7,200万円で、当初の目標のそれぞれ1.3倍と1.7倍にあたる。営業利益率は12.8%で、Smile2020が掲げた10.0%を2.8ポイント上回っている。

編集部では、計画が終わったあとに有価証券報告書へ置かれた目標が「営業利益率10%以上を継続して維持」であり、それが6期同じ文言で載り続け、実績も一度も下回っていない点を、この期間の一貫性として読んでいる。

今後の焦点として読み取れる点

1. 「速やかに開示いたします」がいつになるか。2020年6月に未定とされた次期の中期経営計画は、第59期までの有価証券報告書には見当たらない。率の下限を掲げる形が続くのか、複数年の規模の目標を再び置くのかは、公開情報からは判断できない

2. 12%台に上がった利益率の使い道。営業利益率は10%台から12%台へ移った。この余力を採用・教育に向けるのか、還元に向けるのかは、有価証券報告書から読み取れる範囲が限られる

3. 人手の制約がどう変わっているか。目標を組み替えた理由の1つは人員の調達不調だった。連結従業員数は1,490名(2020年3月末)から1,683名(2026年3月末)へ増えており、この間に売上高は1.47倍になっている。1人あたりの売上高は上がっている

参考情報

1. 株式会社エヌアイデイ「2019年3月期第2四半期決算説明会」書き起こし(開催日2018年11月14日)ログミーファイナンス

2. 株式会社エヌアイデイ「第52期有価証券報告書」(2019年6月27日提出)

3. 株式会社エヌアイデイ「第53期有価証券報告書」(2020年6月25日提出)

4. 株式会社エヌアイデイ「第54期有価証券報告書」(2021年6月25日提出)

5. 株式会社エヌアイデイ「第55期〜第58期有価証券報告書」(2022年6月27日〜2025年6月25日提出)

6. 株式会社エヌアイデイ「第59期有価証券報告書」(2026年6月25日提出)

7. 株式会社エヌアイデイ 公式サイト(会社概要)

本記事は公開情報をもとにLeaders Journal編集部が独自に分析・編集したものです。