中野 祥三郎キッコーマン株式会社 代表取締役社長CEO
LEADER 022
LEADER PROFILE

中野 祥三郎

Shozaburo Nakano
キッコーマン株式会社
代表取締役社長CEO

12%の先に、15%を置いた。

中野 祥三郎

概要

キッコーマン株式会社の代表取締役社長CEO、中野祥三郎氏。2021年6月に社長へ就き、2023年6月にCEOを兼ねた。

同社の中期経営計画2022-2024には、3つの連結業績目標が置かれていた。売上成長率(為替差除き)年平均5%以上、事業利益率10%以上、そしてROE11%以上である。

結果を先に書くと、ROEは対象の3期すべてで11%を上回った。2023年3月期11.4%、2024年3月期12.5%、2025年3月期12.3%である。

そして2025年度から始まった次の中期経営計画2025-2027で、同社はROEの目標を12%以上に引き上げた。売上成長率と事業利益率の目標の文言は、有価証券報告書では前の計画と同じである。

さらにその先がある。2025年11月7日の決算説明会資料のうち、説明者として中野氏の名が記された「中期経営計画について」のパートには、こう書かれている。

2030年度以降早期に、ROE15%をめざす。

3年の中期経営計画の説明資料に、その計画が終わったあとの水準まで書き込まれている。

編集部が注目したのは、中野氏が財務出身である点である。2008年に経営企画部長、2012年にCFO(最高財務責任者)、2021年に社長COO、2023年に社長CEOという経歴をたどっている。ROEを目標の中心に置き、段階的に引き上げていく経営と、この経歴は重なる。

守った11%を12%にし、その先に15%を置いた。これが編集部の読みである。

COMPANY
キッコーマン株式会社
SALES
7,455億3,900万円
EMPLOYEES
7,911名
PRESIDENT SINCE
2021年6月
01

経歴

有価証券報告書(第109期・2026年6月19日提出)の「役員の状況」に記載された略歴は次のとおり。

時期役職
1981年4月当社入社
2008年4月経営企画部長
2008年6月執行役員
2009年12月経営企画部長兼事業開発部長
2011年6月常務執行役員/経営企画室長兼事業開発部長
2012年6月CFO(最高財務責任者)
2015年6月取締役常務執行役員
2019年6月代表取締役専務執行役員
2019年6月キッコーマン食品株式会社 代表取締役社長(現任)
2021年6月代表取締役社長 COO(最高執行責任者)
2023年6月代表取締役社長 CEO(現任)

生年月日は1957年3月28日。所有株式数は1,590千株である。当事業年度の出席状況は、取締役会が10回中10回、指名委員会が4回中4回、報酬委員会が4回中4回となっている。

編集部が略歴から読み取ったのは、経営企画と財務を通ってきた人物であるという点である。入社から27年後の2008年に経営企画部長、31年後の2012年にCFOに就いている。経営企画室長と事業開発部長を兼ねた時期もあり、2019年からはグループの中核であるキッコーマン食品の社長を兼務している。

なお社長とCEOの就任時期は異なる。2021年6月に代表取締役社長COOとなり、CEOを兼ねたのは2023年6月である。社長としての在任は5年3か月、CEOとしては3年3か月にあたる。

02

会社データ

項目内容
社名キッコーマン株式会社(KIKKOMAN CORPORATION)
証券コード2801(東京証券取引所 プライム市場)
設立1917年
業種食料品
従業員数連結7,911名(2026年3月31日現在・臨時従業員482名は外数)
売上収益7,455億3,900万円(2026年3月期・連結/IFRS)
事業利益795億1,200万円(同)
税引前利益840億6,900万円(同)
親会社の所有者に帰属する当期利益616億1,500万円(同)
親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)11.5%(同)

同社はIFRS(国際会計基準)を採用しているため、損益の指標は「営業利益」ではなく「事業利益」を用いる。従業員数のセグメント別の内訳は、国内の食料品製造・販売2,556名、国内その他570名、海外の食料品製造・販売1,766名、海外の食料品卸売2,357名、全社662名である。

03

人物の軌跡

答え合わせ①:計画の初年度が終わるまで、数値目標は有価証券報告書に載っていなかった

中期経営計画2022-2024は、2022年度(2023年3月期)を初年度とする計画である。ところが、その初年度が始まったあとに提出された第105期(2022年3月期・2022年6月21日提出)の有価証券報告書には、数値目標が書かれていない。

「グローバルビジョン2030」の実現に向けて、2022年度を初年度とし、2024年度を最終年度とする中期経営計画の策定を進めております。

数値目標が有価証券報告書に現れるのは、その1年後の第106期(2023年3月期)である。

当社グループは、2022年度を初年度とし、2024年度を最終年度とする中期経営計画を定めております。

<連結業績目標>

・売上成長率(為替差除き)年平均5%以上

・事業利益率 10%以上

・ROE 11%以上

この3つの目標が同じ文言で載っているのは、第106期と第107期(2024年3月期)の2期分である。計画の最終年度にあたる第108期(2025年6月提出)の有価証券報告書では、「目標とする経営指標」はすでに次の計画の内容に置き換わっている。

なお、2021年度以前の中期経営計画については、第105期・第106期の有価証券報告書に名称・数値目標の記載が見当たらなかった。

答え合わせ②:ROE11%以上は、3期すべてで達成された

中期経営計画2022-2024の対象期間は、2022年度(2023年3月期)から2024年度(2025年3月期)である。

年度決算年月ROE目標11%以上
2022年度2023年3月期11.4%上回った
2023年度2024年3月期12.5%上回った
2024年度2025年3月期12.3%上回った

※有価証券報告書の「主要な経営指標等の推移」に記載された親会社所有者帰属持分当期利益率による。

3期のいずれも目標を上回っている。最も高かったのは2023年度の12.5%で、目標を1.5ポイント上回った。

答え合わせ③:事業利益率は、3期のうち2期で10%を上回った

同じ計画の事業利益率10%以上について、編集部が事業利益を売上収益で割って計算すると、次のようになる。

年度決算年月売上収益事業利益事業利益率
(前年)2022年3月期5,164億4,000万円522億7,300万円10.12%
2022年度2023年3月期6,188億9,900万円587億7,700万円9.50%
2023年度2024年3月期6,608億3,500万円734億200万円11.11%
2024年度2025年3月期7,089億7,900万円772億7,500万円10.90%
2025年度2026年3月期7,455億3,900万円795億1,200万円10.67%

※事業利益率は編集部の計算である。

3期のうち2期で10%を上回っている。初年度の2022年度は9.50%で、翌年度に11.11%へ上がった。

この数値については、会社自身も同じ水準を示している。編集部が確認したところ、有価証券報告書のなかで「事業利益率」の実績が会社の言葉で書かれているのは「役員の状況」の役員報酬の説明部分で、2023年度11.1%、2024年度10.9%、2025年度10.7%と記載されている。編集部の計算と一致する。

答え合わせ④:次の計画で、ROEを1ポイント上げた

2025年度から始まった中期経営計画2025-2027の目標は、次のとおりである。

項目2022-20242025-2027変化
売上成長率(為替差除き)年平均5%以上年平均5%以上同じ文言
事業利益率10%以上10%以上同じ文言
ROE11%以上12%以上+1ポイント

※目標の文言は各期の有価証券報告書「目標とする経営指標」による。なお決算説明会資料(2025年11月7日)では、事業利益率とROEの目標に「2027年度」という年度の指定が付されている。

3つのうち、有価証券報告書の文言で水準が変わったのはROEだけである。

重点課題も入れ替わっている。前の計画は「環境変化に対応し、成長の継続と収益力向上」「事業活動を通じ、社会課題解決に貢献」の2つだった。新しい計画は「成長の継続と収益力の維持・向上」「将来に向けた経営資源の活用」「事業活動を通じた社会課題解決」の3つで、「将来に向けた経営資源の活用」が加わっている。

答え合わせ⑤:3年の計画の資料に、その先の水準を書いた

2025年11月7日の決算説明会資料は、2つのパートに分かれている。前半の「中期経営計画について」に代表取締役社長CEOの中野氏、後半の業績報告に執行役員CFOの佐藤俊行氏の名が、それぞれ説明者として記されている。

その中野氏のパートの最後に、次の1行が置かれている。

2030年度以降早期に、ROE15%をめざす。

あわせて4つの方針が挙げられている。

⚫ 売上成長を継続しつつ、事業利益率向上

⚫ 成長を支える市場投資、設備投資を積極的に実施

⚫ 新規事業、M&A等への投資も積極的に検討・実施

⚫ 株主還元を継続し、資本効率向上

中期経営計画2025-2027の最終年度は2027年度である。その計画を説明する資料に、3年後ではなく、さらにその先(2030年度以降)の水準が書かれている。

ROEの水準を並べると、階段になる。

時期ROEの目標・めざす水準
2022-202411%以上(有価証券報告書の目標)
2025-202712%以上(同上)
2030年度以降早期15%(決算説明会資料の「めざす」水準)

※15%は決算説明会資料に「めざす」と書かれたもので、有価証券報告書の「目標とする経営指標」には含まれていない。

なお、決算説明会資料は会社の作成物である。本記事では、説明者として名前が記されたパートを中野氏の名義として扱った。発言の書き起こしは確認できていない。

答え合わせ⑥:新計画の1年目は11.5%。利益ではなく分母が動いた

中期経営計画2025-2027の1年目である2026年3月期の実績は、次のとおりである。

項目目標2026年3月期
ROE12%以上11.5%
事業利益率10%以上10.67%(会社の通期予想も10.7%)
売上成長率(為替差除き)年平均5%以上通期予想104.6%=+4.6%

ROEは11.5%である。12%以上という目標は2027年度に対するもので、1年目の時点で判定される数字ではない。

編集部が中身を分解すると、この0.8ポイントの低下は利益の減少によるものではない。

項目2025年3月期2026年3月期変化
親会社の所有者に帰属する当期利益616億9,500万円616億1,500万円△0.1%
親会社所有者帰属持分(期末)5,085億3,900万円5,609億2,400万円+10.3%
ROE12.3%11.5%△0.8ポイント

※変化率は編集部の計算である。

利益はほぼ横ばいで、ROEの分母にあたる持分が増えた。期末残高では10.3%増だが、ROEの計算に用いられる期首・期末の平均では約7%増である(いずれも編集部の計算。開示されたROEが期中平均の持分で計算されていることは、編集部が検算で確認した)。

同じ期の親会社の所有者に帰属する当期包括利益は965億5,900万円で、当期利益616億1,500万円を大きく上回っている。IFRSでは為替換算差額などが包括利益に含まれる。

なお、1株当たり当期利益は5期で40.59円から65.99円へ、1.63倍になっている(2024年4月の株式分割を第105期の期首に遡って調整した有価証券報告書の値にもとづく編集部の計算)。

答え合わせ⑦:「将来に向けた経営資源の活用」の中身は、798億円の工場だった

新しい計画で加わった重点課題「将来に向けた経営資源の活用」について、有価証券報告書の設備の計画を見ると、規模の大きい案件が1つある。

項目内容
会社名KIKKOMAN FOODS, INC.
事業所ウィスコンシン州ジェファーソン工場
設備の内容しょうゆ及びしょうゆ関連調味料等製造設備
投資予定総額798億8,900万円(原文注記=10年間の総額)
既支払額(2026年3月末)470億1,000万円
資金調達方法自己資金
着手2024年4月
完了2026年9月(原文注記=出荷開始時期)

既支払額は、2024年3月末の23億9,900万円から2025年3月末の170億8,600万円、2026年3月末の470億1,000万円へと増えている。投資予定総額に対する進捗は58.8%である(編集部の計算)。

有価証券報告書の対処方針にはこう書かれている。

北米では、2026年秋から、米国第3工場が出荷を開始する予定であり、供給体制の整備と需要への対応により、安定成長を続けてまいります。

2026年3月期の設備投資額(無形資産を含む)は709億1,000万円で、前期比151.4%である。うち海外の食料品製造・販売が406億9,600万円を占める。

ROEの分母は、こうした投資と、それを支える資本の積み上がりの両方で動く。中野氏のパートが挙げた4つの方針のうち2つが投資に関するものであることと、この工場の規模は対応している。

04

経営哲学

財務の指標を、報酬につないでいる

編集部が有価証券報告書を読んで気づいたのは、「事業利益率」の実績が書かれている場所である。経営成績の分析ではなく、「役員の状況」の役員報酬の説明部分に置かれている。株式報酬の業績連動係数を決める指標として使われているためである。

期年度会社が記載した連結事業利益率
第107期2023年度11.1%
第108期2024年度10.9%
第109期2025年度10.7%

中期経営計画が掲げる指標が、そのまま役員の報酬を決める係数になっている。中野氏は報酬委員会にも4回中4回出席している。

総括の文章は置かれていない

一方で、編集部が第108期(計画の最終年度)と第109期の有価証券報告書を確認したところ、中期経営計画2022-2024について「達成できた」「できなかった」と明示的に総括する文章は見当たらなかった。

前述のとおり、計画の最終年度にあたる第108期の有価証券報告書では、「目標とする経営指標」の欄はすでに次の計画の内容に切り替わっている。ROE11%以上は3期すべてで上回り、事業利益率10%以上も3期のうち2期で上回っている。それでも、計画の結果を言葉でまとめた記述は置かれていない。数値目標は次の計画へ、水準を1つ上げた形で引き継がれている。

目指す姿には、数字が入っていない

同社は2030年に向けた将来ビジョン「グローバルビジョン2030」を掲げている。有価証券報告書に記載された「目指す姿」は次の3つである。

1.キッコーマンしょうゆをグローバル・スタンダードの調味料にする

2.世界中で新しいおいしさを創造し、より豊かで健康的な食生活に貢献する

3.キッコーマンらしい活動を通じて、地球社会における存在意義をさらに高めていく

ここに財務の数値目標は含まれていない。編集部が確認した範囲で、グローバルビジョン2030に付された数値は気候に関するもので、「2030年度までに2018年度比でCO2排出量を50%以上削減する」と記載されている。

ビジョンは言葉で、達成の水準は中期経営計画の数値で置く。「2030年度以降早期にROE15%」という一文は、その2つをつなぐ位置にある。

※ここで確認したのは有価証券報告書、同社公式サイト、および決算説明会資料の範囲である。

05

人物像

リーダーシップタイプ

編集部の分析では、中野氏が社長を務める期間の経営に見える特徴は「一つの指標を、段階で上げている」ことである。なお、以下の3点はいずれも会社名義の開示にもとづく。決算説明会資料の中期経営計画のパートは、説明者として中野氏の名が記されたものである。

根拠は3つある。

1. 中期経営計画2022-2024で掲げたROE11%以上を3期すべてで上回った

2. 次の計画で、有価証券報告書の文言で水準が変わったのはROEだけだった(11%以上→12%以上)

3. その計画の説明資料に、計画終了後の水準(2030年度以降早期にROE15%)まで書いた

3つに共通しているのは、資本効率の指標を軸に置き、達成のたびに水準を上げている点である。

強み・特徴(編集部分析)

1. ROE11%以上を3期すべてで達成している。11.4%/12.5%/12.3%で、最も高い期は目標を1.5ポイント上回った

2. 上げる対象を1つに絞っている。新しい計画で有価証券報告書の文言が変わったのはROEだけで、売上成長率と事業利益率は同じ文言である

3. 3年の計画の先まで示している。2030年度以降早期にROE15%という水準を、中期経営計画の説明資料に書いている

4. 財務と経営企画を通ってきている。2008年に経営企画部長、2012年にCFO、2021年に社長COO、2023年に社長CEO

5. 5期で売上収益を1.44倍にしている。5,164億4,000万円(2022年3月期)から7,455億3,900万円(2026年3月期)へ(編集部の計算)

6. 将来の供給力に大きく投じている。米国第3工場の投資予定総額は798億8,900万円(10年間の総額)で、2026年3月末までに470億1,000万円を支払っている

発言・記載と実績の対応

発言・記載時期その後
(会社)2022年度を初年度とし、2024年度を最終年度とする中期経営計画の策定を進めております2022年6月(第105期有報)初年度が始まっていたが、この時点の有価証券報告書に数値目標の記載はない
(会社)売上成長率(為替差除き)年平均5%以上/事業利益率 10%以上/ROE 11%以上2023年6月(第106期有報)・2024年6月(第107期有報)ROEは3期すべてで11%を上回った(11.4%/12.5%/12.3%)。事業利益率は3期のうち2期で10%を上回った(9.50%/11.11%/10.90%・編集部の計算)
(会社)売上成長率(為替差除き)年平均5%以上/事業利益率 10%以上/ROE 12%以上2025年6月(第108期有報)以降有価証券報告書の文言で水準が変わったのはROEのみ。1年目の2026年3月期はROE11.5%・事業利益率10.7%
(中野氏が説明者の会社資料)2030年度以降早期に、ROE15%をめざす。2025年11月7日<br>決算説明会資料「中期経営計画について」中期経営計画2025-2027の最終年度は2027年度。その先の水準を同じ資料に記載している
(中野氏が説明者の会社資料)中計目標達成に向けては概ね計画通りの進捗。セグメントにより短期的な課題はあるが中長期的な成長見通しは変わらず同上2025年度の売上収益は為替差を除く前年比で通期予想104.6%
(会社)北米では、2026年秋から、米国第3工場が出荷を開始する予定であり2026年6月(第109期有報)投資予定総額798億8,900万円(10年総額)のうち470億1,000万円を2026年3月末までに支払い済み
06

編集部総評

中野氏が社長を務めるこの期間を、編集部は「一つの指標を、守ってから上げた期間」と読んだ。

中期経営計画2022-2024が掲げた3つの目標のうち、ROE11%以上は3期すべてで上回った。11.4%、12.5%、12.3%である。事業利益率10%以上は、3期のうち2期で上回っている(初年度の2022年度は9.50%、以降11.11%、10.90%。いずれも編集部の計算で、会社が役員報酬の説明部分に記載した数値とも一致する)。

編集部が実績を確認できた指標はこの2つである。売上成長率(為替差除き)の実績は有価証券報告書に開示がないため、3つの目標の達成度を横に並べることはできない。確認できた2つのうち、3期すべてで目標を上回ったのはROEだった。そして次の計画で、有価証券報告書の文言で水準が変わったのも、そのROEである。

さらに2025年11月の決算説明会資料で、中野氏が説明者として記されたパートは「2030年度以降早期に、ROE15%をめざす」と書いた。3年の計画を説明する資料に、その計画が終わったあとの水準が置かれている。11%、12%、15%という階段である。

1年目である2026年3月期のROEは11.5%だった。これは利益が減ったためではない。当期利益は616億9,500万円から616億1,500万円へほぼ横ばいで、分母にあたる持分が期末残高で10.3%、期中平均で約7%増えている。同じ期の包括利益は965億5,900万円で、当期利益を大きく上回った。

同じ期、同社は設備投資に709億1,000万円(前期比151.4%)を投じ、うち406億9,600万円が海外の食料品製造・販売に向かった。米国第3工場は2026年秋に出荷を開始する予定で、投資予定総額798億8,900万円のうち470億1,000万円が支払済みである。新しい計画で加わった重点課題「将来に向けた経営資源の活用」と、ROE15%に向けた4つの方針のうち2つが、この投資の方向と重なっている。

編集部が注目したのは、中野氏が2008年に経営企画部長、2012年にCFOを務めた財務出身である点である。中期経営計画の指標がそのまま役員報酬の業績連動係数に使われており、中野氏は報酬委員会にも4回中4回出席している。指標を置き、達成を確かめ、水準を上げるという運び方は、この経歴と重なって見える。

今後の焦点として読み取れる点

1. 12%にどう届くか。2026年3月期のROEは11.5%で、目標年度である2027年度まで2期ある。利益が横ばいのまま持分が増えれば、率は下がる方向に働く

2. 米国第3工場が数字にどう表れるか。2026年秋から出荷を開始する予定で、投資予定総額798億8,900万円は10年間の総額とされている。売上と利益にどの時点でどれだけ寄与するかは、公開情報からは判断できない

3. 売上成長率の年平均5%以上をどう満たすか。2025年度の通期予想は為替差を除く前年比104.6%である。年平均での達成には、残り2期での上積みが必要になる(編集部の読み)

4. 15%という水準がいつ計画に入るか。現在の「2030年度以降早期に」という表現は決算説明会資料にあるもので、有価証券報告書の目標とする経営指標には記載されていない。次の中期経営計画でどの水準が置かれるかは、公開情報からは分からない

参考情報

1. キッコーマン株式会社「第105期有価証券報告書」(2022年6月21日提出)

2. キッコーマン株式会社「第106期有価証券報告書」(2023年提出)

3. キッコーマン株式会社「第107期有価証券報告書」(2024年提出)

4. キッコーマン株式会社「第108期有価証券報告書」(2025年6月20日提出)

5. キッコーマン株式会社「第109期有価証券報告書」(2026年6月19日提出)

6. キッコーマン株式会社「2025年度第2四半期 決算説明会資料」(2025年11月7日)

7. キッコーマン株式会社 公式サイト「中期経営計画」

8. キッコーマン株式会社「キッコーマングループ コーポレートレポート2024」

本記事は公開情報をもとにLeaders Journal編集部が独自に分析・編集したものです。