賀 賢漢株式会社フェローテック 代表取締役 社長執行役員 グループCEO
LEADER 015
LEADER PROFILE

賀 賢漢

He Xian Han
株式会社フェローテック
代表取締役 社長執行役員 グループCEO

売上は、3倍を超えた。

賀 賢漢

概要

公開されている決算説明、有価証券報告書、会社発表資料をもとに、その人物のキャリアと考え方を整理しました。

フェローテックの賀賢漢氏は、2026年6月3日の決算説明で、これからの3年間の計画を示したあと、こう続けています。

「もちろん当期純利益も着々と成長していけると思っています。ただし、短期的な成長は誰でもできますが、長期的に成長することはなかなか難しいです」

編集部が注目したのは、この人物がすでに長期の成長を実現している側にいることです。賀氏が社長に就いたのは2020年7月。その直前の決算期にあたる2020年3月期の連結売上高は816億円でした。2026年3月期は2,889億円で、6年間で3.54倍になっています。従業員数も7,533名から16,858名へ、2.24倍に増えました。

編集部が検証したのは、その成長が会社自身の計画にどこまで追いついたかです。

2023年5月に会社が公表した中期経営計画には、2025年3月期の目標として売上高2,700億円、営業利益450億円という数字が置かれていました。売上高は2,743億円で目標を上回りました。営業利益は240億円で、目標の53.5%にあたります。

2025年3月期については、売上は計画に届き、利益はその半分あまりでした。

ただしこの会社の計画は毎年更新される仕組みで、直近の計画に対する2026年3月期の達成状況は、売上高が101.4%、営業利益が98.4%でした。同じ実績が、どの計画と比べるかで違う姿に見えます。その両方を、公開資料でたどります。

COMPANY
株式会社フェローテック
SALES
2,889億3,300万円
EMPLOYEES
16,858名
PRESIDENT SINCE
2020年7月
01

経歴

プロフィール

項目内容
氏名賀 賢漢
ローマ字表記He Xian Han
生年月日1957年10月14日
現職株式会社フェローテック 代表取締役 社長執行役員 グループCEO
社長就任2020年7月
入社1993年4月

※生年月日・役職・略歴は有価証券報告書(2026年3月期)の役員一覧に基づきます。ローマ字表記は同社公式サイトの英語版役員ページの記載によります。氏名の日本語の読みは、公式サイトにも有価証券報告書にも記載がなく、公開情報では確認できませんでした。出身地・学歴も確認できていません。

経歴

時期役職
1993年4月フェローテック入社
1998年3月杭州大和熱磁電子有限公司 董事長(現任)
2001年6月取締役
2004年6月常務取締役
2005年3月上海漢虹精密機械有限公司 董事長(現任)
2006年8月事業統括担当 常務取締役
2008年3月香港第一半導体科技股份有限公司 董事長(現任)
2011年4月寧夏申和新材料科技有限公司 董事長(現任)
2011年6月代表取締役副社長 兼 執行役員 事業統括担当
2017年9月杭州中欣晶圓半導体股份有限公司 董事長(現任)
2020年7月代表取締役社長執行役員 兼 グループCEO(現任)

出典:有価証券報告書(2026年3月期)の役員一覧。上表は主なものを抜き出したもので、有価証券報告書に記載された略歴には、中国・マレーシア・米国のグループ会社の董事長・取締役への就任が20件以上、いずれも「現任」として並んでいます。

編集部が注目した点。賀氏の経歴には、日本の上場企業の社長としては珍しい特徴があります。入社の5年後(1998年)から現在まで、中国のグループ会社の董事長を務め続けていることです。杭州、上海、寧夏、香港、安徽、江蘇、浙江、四川。有価証券報告書に並ぶ地名は中国全土に広がっています。

同社が中国に進出したのは1992年で、賀氏の入社はその翌年にあたります。この人物の在籍期間は、同社の中国事業の歴史とほぼ重なっています。副社長として事業統括を担ったのが2011年6月、社長に就いたのが2020年7月です。

02

会社データ

項目内容
商号株式会社フェローテック(英文 Ferrotec Corporation)
設立1980年9月27日
本社所在地東京都中央区日本橋2-3-4 日本橋プラザビル5F
上場東京証券取引所スタンダード市場(証券コード6890)
資本金295億4,942万円(2026年3月31日現在)
事業内容半導体等装置関連事業、電子デバイス事業、車載関連事業
連結従業員数16,858名(2026年3月31日現在。単独519名)
連結売上高2,889億円(2026年3月期)
決算期12月31日(2026年度より3月期から変更)

※出典は同社公式サイトの会社概要および有価証券報告書。同社は1980年に米国企業の日本子会社として設立され、1987年に米国親会社から独立、1999年には米NASDAQ市場のその元親会社を友好的TOBにより傘下に収めています(公式サイトの社長メッセージの記述による)。

03

人物の軌跡

決算期が変わる年に

この記事を書くにあたって、最初に確かめる必要があったことがあります。同社は2026年度から、決算期を3月期から12月期へ変更しました。

2026年5月15日の開示に、理由が記されています。

「グループ内で決算期を統一し、適時な業績管理によるグループ事業運営の効率化を行うとともに、経営情報の適時、的確な開示による更なる経営の透明性向上を図るため、当社の事業年度を毎年1月1日から12月31日までに変更いたします」

経過期間となる第47期は、2026年4月1日から12月31日までの9か月間です。ただし数字の読み方には注意が必要でした。同じ決算説明で、財務担当の武田明取締役はこう述べています。

「今期、2026年12月期は2026年4月から12月の9ヶ月決算となりますが、当社の連結子会社は以前から12月決算であり、連結子会社の1月から12月の売上損益が計上され、9ヶ月決算となることの連結業績への影響は売上で50億円程度と限定的です」

連結子会社はもともと12月決算だったため、連結の売上はほぼ通年に近い形で計上されます。言い換えれば、これまでは親会社と子会社の決算日が3か月ずれた状態で連結していました。決算期の変更は、そのずれを解消するものです。

「Ex-China」という言葉

2026年6月の決算説明で、賀氏は今年の戦略を次のように説明しています。

「今年に入ってからの戦略として、Ex-China(中国外製造)のことをまず考えました。そして日本、欧米のところはなるべくEx-China(中国外製造)のキャパシティを用いることにしました。一方で、中国の半導体はかなりのスピードで成長し、特に一般の半導体の素子の製造量が増加しています」

「2022年より、日本への回帰はしっかりと実現してきています」

ここで注意が必要なのは、Ex-Chinaが製造場所の方針だという点です。同じ説明で武田氏は、中期経営計画の基本方針を「日本・欧米顧客の中国外製造(Ex-China)のニーズに対応するとともに、中国の顧客対応を強化し、成長を実現すること」と述べています。

一方、同社が開示しているのは販売先の地域構成です。生産をどこで行っているかは、この表からは読めません。参考として販売先の構成を示します。

地域2025年3月期構成比2026年3月期構成比
日本359億49百万円13.1%397億3百万円13.7%
中国1,639億56百万円59.8%1,612億89百万円55.8%
米国574億96百万円21.0%678億75百万円23.5%
その他169億89百万円6.2%200億64百万円6.9%

出典:同社IRサイトの地域別売上高(連結)。構成比は編集部が金額から算出したもので、原資料には比率の記載がありません。

中国の比率が59.8%から55.8%へ約3.9ポイント下がり、米国が21.0%から23.5%へ上がっています。中国の金額自体は1,639億円から1,612億円へわずかに減りました。中国向けの販売を縮小したというより、他の地域の伸びが上回った形です。ただしこれは販売先の構成であり、Ex-Chinaが指す生産拠点の移動を示すものではありません。

AIと光モジュール

同じ説明のなかで、賀氏は自社の製品と現在の需要をこう結びつけています。

「2026年はAIの元年になります。加えて、5年間のサイクルの、半導体の元年になります。去年の後半からますます注文も増えて、市場も活発的に成長してきました」

「今年はどうなるかというと、本当に25パーセントから30パーセントの成長ができるという自信を持っています」

「現時点で、当社は全世界の7割の光モジュールを保持しています」

この「7割」には、同社の資料に注記が付いています。「グローバル大手メーカー内シェア約70パーセント(当社推計)」というものです。編集部が確認できたのは、この数字が同社自身の推計であるという点までです。第三者による検証は公開情報では確認できませんでした。

04

経営哲学

会社が公表した計画と、その後に出た実績を並べます。

答え合わせ①:2025年3月期の売上高2,700億円——2,743億円

2023年5月31日に開示された中期経営計画のアップデート資料に、次の計画が載っています。

項目22/3期(実績)23/3期(実績)24/3期(予想)25/3期(計画)26/3期(計画)
売上高1,338億円2,108億円2,200億円2,700億円3,600億円
営業利益226億円350億円325億円450億円600億円
営業利益率16.9%16.6%14.8%16.7%17.5%
当期純利益266億円297億円180億円250億円360億円

出典:2023年3月期 決算説明および中期経営計画のアップデート資料(2023年5月31日開示)。同資料には「25/3期計画は売上高2,700億円、営業利益450億円、当期純利益250億円と更なる伸長を計画」と記されています。

有価証券報告書で確認した2025年3月期の連結売上高は2,743億90百万円でした。計画の2,700億円を約44億円上回っています。売上高については、2年先を見て置いた目標に届きました。

答え合わせ②:同じ期の営業利益450億円——240億円

同じ期の営業利益は240億89百万円でした。計画の450億円に対して53.5%です。

翌期にあたる2026年3月期も同じ形になりました。計画では売上高3,600億円・営業利益600億円でしたが、実績は売上高2,889億33百万円(80.3%)、営業利益275億61百万円(45.9%)でした。

25/3期 計画25/3期 実績26/3期 計画26/3期 実績
売上高2,700億円2,743億円3,600億円2,889億円
営業利益450億円240億円600億円275億円
当期純利益250億円156億円360億円148億円

出典:計画は2023年5月31日開示の資料、実績は各期の有価証券報告書。

ただし、この比較には条件を添える必要があります。

答え合わせ③:計画は毎年更新される——直近の1年はほぼ計画どおり

有価証券報告書に、同社の計画の立て方が記されています。

「当社グループは、経営環境等の変化に機動的に対応するため、原則として毎年更新するローリング方式の中期経営計画(3か年)を策定しております」

同社の中期経営計画は毎年更新されます。前節で使った2023年5月の数字は、その時点で2年先を見て置かれたもので、その後2度にわたって更新されています。

有価証券報告書には、直近の計画に対する達成状況の表が載っています。

2026年3月期計画実績達成率
売上高2,850億円2,889億円101.4%
営業利益280億円275億円98.4%
営業利益率9.8%9.5%—
親会社株主に帰属する当期純利益160億円148億円93.0%

出典:有価証券報告書(2026年3月期)の「当連結会計年度の計画達成状況等」。計画は2025年5月に公表された数値です。達成率は編集部が算出しました。

直近の1年について見れば、売上高は計画を上回り、営業利益は98.4%でした。2023年5月の数字と比べたときの45.9%とは、違う姿になります。

編集部が確認したのは、この会社では「計画」が指す数字が毎年変わるという点です。2年先を見て置いた目標には届いておらず、直近1年の計画に対してはほぼ達成している。どちらも事実です。

同じ表には、長期目標に対する現在地も示されています。

指標長期目標2026年3月期 実績
ROE15%6.0%
ROIC8%3.2%
自己資本比率40%37.6%

出典:同じ表より。長期目標の水準は有価証券報告書に記載されたものです。

利益の水準がどこで決まっているのかを次に見ます。

答え合わせ④:利益の水準を決めているもの——減価償却費が4年で3.4倍

営業利益率の推移は次のとおりです。

決算期売上高営業利益営業利益率
2022年3月期1,338億円226億円16.9%
2023年3月期2,108億円350億円16.6%
2024年3月期2,224億円248億円11.2%
2025年3月期2,743億円240億円8.8%
2026年3月期2,889億円275億円9.5%

出典:有価証券報告書およびEDINETの財務データ。

直近の2026年3月期は8.8%から9.5%へ0.7ポイント上がり、低下が止まっています。2022年3月期の16.9%とは差がありますが、下がり続けている状態ではありません。

同じ期間の減価償却費を並べると、動きが見えてきます。

決算期減価償却費
2022年3月期80億85百万円
2023年3月期126億18百万円
2024年3月期163億98百万円
2025年3月期236億72百万円
2026年3月期274億26百万円

出典:同社IRサイトの財務データ(5期分)。直近2期は有価証券報告書の連結キャッシュ・フロー計算書の数値と一致することを確認しました。

2022年3月期から2026年3月期にかけて、減価償却費は80億円から274億円へ、3.4倍になりました。同じ期間の営業利益の伸びは226億円から275億円で1.22倍です。増えた減価償却費(193億円)は、増えた営業利益(49億円)の約4倍にあたります。

会社もこの負担に触れています。2023年5月の資料は、2024年3月期を減益と予想した理由をこう記していました。

「営業利益面では、マテリアル製品等の減益及び減価償却費増加等をカバーできず、営業減益予想」

「中国工場増設等により減価償却費が増加」

会社は直近の決算説明でも、利益率について次のように述べています。

「足元ではマレーシア大規模投資等の影響から利益率が低下していますが、利益率向上への取り組みを強化し、マレーシア工場の利益率の引き上げとともにコスト管理・コスト削減、デジタル化・自動化・AI化を進めています」(武田氏)

会社は利益率の低下を認め、その要因として大規模投資を挙げています。編集部が確認した減価償却費の推移は、この説明と同じ方向を示しています。

ただし編集部は、この一点だけで利益率の変化を説明することは避けました。2022年3月期から2026年3月期までの4年間を通してまとめた説明は、公開資料では各年度ごとに分かれており、要因の重みづけまでは確認できませんでした。

直近期については、売上原価率が前期より1.4ポイント下がって71.9%になったこと、販売費及び一般管理費が9.1%増えたことが有価証券報告書に記されています。原価率は改善する方向に動いていました。

答え合わせ⑤:2026年7月、営業利益の目標を600億円へ

決算期が変わる2026年12月期について、会社は期初予想を短期間に2度修正しています。

開示日売上高営業利益経常利益当期純利益
2026年5月15日(期初)3,500億円380億円360億円230億円
2026年7月22日(上方修正)3,800億円600億円550億円330億円
2026年8月14日(再修正)3,800億円600億円550億円360億円

出典:各日付の決算短信および業績予想の修正に関する開示。7月22日の修正は同日に「開示事項の訂正」が出ており、上表は訂正後の数値です。8月14日の修正は当期純利益のみが対象で、理由は「営業外損益及び特別損益の各項目等について精査を行った結果」と記されています。

7月22日の修正理由には、次のように書かれています。

「生成AIに関連する半導体製造装置向けに半導体マテリアル製品(セラミックス、石英)や真空シール・金属加工等の半導体等装置関連事業の需要が増加していること、電子デバイス事業においてAIデータセンター用の光トランシーバー向けサーモモジュールの需要が増加している等の好況を背景に」

編集部が注目したのは、この600億円という数字です。2023年5月の計画で2026年3月期の目標として置かれていたのが、同じ600億円でした。2026年3月期の期末から9か月後に終わる経過期の予想として、同じ水準が掲げられたことになります。ただし対象期間の構成は異なり(親会社は9か月、連結子会社は12か月)、600億円は実績ではなく予想値です。

期初予想の380億円から600億円への引き上げは、2か月ほどの間に決まりました。会社が挙げた理由は生成AI関連の需要です。

答え合わせ⑥:この先の目標——2027年12月期に5,000億円を「見直し中」

2026年8月14日に開示されたローリングプランには、次の先の姿が示されています。

2027年12月期 2026年5月公表2027年12月期 現段階
売上高4,000億円「顧客需要を確認中の段階だが、売上5,000億円・営業利益800億円程度の水準を目指して、積上げ・見直し中」
営業利益480億円

同資料には2028年12月期の目標として売上高4,500億円・営業利益570億円・当期純利益380億円が記載されていますが、「2027年12月期の当期純利益・設備投資他および2028年12月期の各目標値は現在精査を進めており、内容が確定次第、改めて正式に開示いたします」という注記が付いています。

2027年12月期について、4,000億円という数字と5,000億円という数字が同じ資料に並んでいます。確定した目標ではなく、見直しの途中にあることが明示されています。

同じ8月14日に開示された業績予想の修正にも、次のように記されています。

「来期(2027年12月期)以降の業績目標および中期経営計画の数値につきましては、本日時点で変更はございません。一方で、今後の事業環境等を踏まえますと、現行の目標を上回る水準で推移する可能性もあるものと認識しております。来期以降の業績予想および中期経営計画の数値につきましては、今後の業績動向を注視のうえ現在精査を進めており、内容が確定次第、改めて正式に開示いたします」

見直しの方向は、現行の目標を上回る側であることが示されています。

なお同じ決算説明で、武田氏は指標の目標を引き下げたことにも触れています。

「ROEおよびROICの目標について、利益目標と整合性を取った水準に引き下げていますが、目指す水準はROE15パーセント、ROIC8パーセントから変わりありません」

この6年で、事業の形がどう変わったか

項目2020年3月期2026年3月期変化
連結売上高816億円2,889億円3.54倍
連結営業利益60億円275億円4.59倍
営業利益率7.4%9.5%+2.1ポイント
親会社株主に帰属する当期純利益17億84百万円148億86百万円8.34倍
連結従業員数7,533名16,858名2.24倍

出典:有価証券報告書およびEDINETの財務データ。2020年3月期は賀氏の社長就任(2020年7月)の直前の決算期です。

就任前と直近を並べると、売上高は3.54倍、営業利益は4.59倍です。営業利益率も7.4%から9.5%へ上がっています。前節で見た16.9%からの低下は、2022年3月期という高い水準を起点にした場合の姿でした。どの年を起点にするかで、同じ会社の見え方が変わります。

事業別の内訳は次のとおりです。

セグメント2025年3月期 売上高利益2026年3月期 売上高利益
半導体等装置関連事業1,652億45百万円123億5百万円1,851億39百万円160億48百万円
電子デバイス事業504億87百万円82億50百万円575億84百万円104億65百万円
車載関連事業304億63百万円35億99百万円292億45百万円26億94百万円
その他281億94百万円8億43百万円169億64百万円△2億97百万円

出典:有価証券報告書(2026年3月期)のセグメント情報。「その他」はソーブレード、工作機械、太陽電池用シリコン製品等です。

主力の半導体等装置関連事業と電子デバイス事業は、売上・利益ともに伸びています。電子デバイス事業の利益率は18.2%で、3つの事業のなかで最も高い水準です。賀氏がAI関連の需要と結びつけて語ったサーモモジュールが含まれる事業です。

05

人物像

公開資料から読み取れる賀氏の特徴を3点に整理します。

現場の数字を週単位で見る。 決算説明では効率化の方法をこう述べています。

「効率を上げる方法としては、コストダウンがあります。その方法は以前とまったく異なり、毎週数字をチェックしています。そして、約6ヶ月以内で100パーセント以上の効率化が可能だと思っています」

「生産効率の改善にはデジタル化、自動化、見える化をしなければなりません。そのためにはシステムが重要ですが、当社のシステムはほとんど揃いました」

成長の持続を課題として語る。 3年間の利益計画を示した直後に「短期的な成長は誰でもできますが、長期的に成長することはなかなか難しいです」と述べています。自社が高い成長率を続けてきた局面で、その難しさに言及する話し方をしています。

企業文化と人材を経営の要素として挙げる。 決算説明の後半で、業績の説明と同じ流れのなかでこう語っています。

「当社は基本的な考え方は「お客さまを尊敬する」「従業員も尊敬する」ということです。勉強、勤勉、信用が会社の文化になります」

「人材を揃える方法としては、まず1つは自社社員をよくトレーニングします。もう1つは、外から良い人材にジョインしてもらうことです。会社が良くなれば、いい人材は自然に集まるということに自信を持っています」

今後の焦点として読み取れる点

投資の回収局面。 減価償却費は4年で3.4倍になりました。2026年12月期の営業利益予想600億円は、この負担を前提にした水準です。設備が生む売上が償却の増加を上回るかどうかが、営業利益率の行き先を決めます。

目標の確定。 2027年12月期については4,000億円と5,000億円という2つの数字が同じ資料に並び、「見直し中」と記されています。2028年12月期の目標にも「精査を進めており」という注記が付いています。数字が確定した段階で、あらためて答え合わせができる論点です。

生産拠点の構成。 賀氏が語る「Ex-China」は製造場所の方針です。同社が定期的に開示しているのは販売先の地域構成であり、生産をどこで行っているかの内訳は継続的な形では公開されていません。マレーシアや日本の生産能力がどこまで拡張されたかは、設備投資額や工場ごとの開示で追う論点になります。

06

編集部総評

賀賢漢氏の6年を、編集部は「規模の拡大が先に進み、利益がその後を追っている6年」と読みました。

社長就任前の2020年3月期に816億円だった連結売上高は、2026年3月期に2,889億円になりました。3.54倍です。従業員数は7,533名から16,858名へ増えました。2023年5月に会社が置いた2025年3月期の売上目標2,700億円は、2,743億円で上回っています。2年先を見て立てた数字に届いたことになります。

営業利益は、同じ期に240億円で、目標450億円の53.5%でした。翌期も275億円で、目標600億円の45.9%です。

ただし、この評価には条件が付きます。同社の中期経営計画は毎年更新される仕組みで、有価証券報告書にも「原則として毎年更新するローリング方式」と明記されています。直近の計画(2025年5月公表)に対する2026年3月期の達成状況は、売上高が101.4%、営業利益が98.4%でした。2年先を見て置いた数字には届かず、直近1年の計画にはほぼ届いている。同じ期の実績が、比べる相手によって違う姿に見えます。

利益の水準を決めているものとして編集部が確認できたのは、減価償却費の増加です。2022年3月期の80億円が2026年3月期には274億円になり、増加額193億円は同じ期間の営業利益の増加額49億円の約4倍にあたります。会社も決算説明で「足元ではマレーシア大規模投資等の影響から利益率が低下しています」と述べており、生産能力の拡張が費用として先に計上されている状態です。

ただし、この一点だけで利益率の変化を説明することは避けました。4年間を通した要因の重みづけは、公開資料では確認できませんでした。直近期については売上原価率が1.4ポイント改善しており、費用の側だけが動いていたわけでもありません。

2026年7月、会社は2026年12月期の営業利益予想を380億円から600億円へ引き上げました。生成AI関連の需要が理由として挙げられています。この600億円は、2023年5月の計画で2026年3月期の目標として置かれていた数字と同じです。2026年3月期の期末から9か月後に終わる経過期の予想として、同じ水準に手が届く位置に来たことになります。

賀氏は「長期的に成長することはなかなか難しい」と語りました。その言葉を述べた本人が、6年で売上を3.5倍にし、いま利益の水準を計画に近づけようとしています。

参考情報

参考にした公開情報

資料発表時期内容
2026年3月期 決算説明の書き起こし2026年6月3日開催・6月12日公開本記事で引用した賀氏の発言の出典
中期経営計画のアップデート資料2023年5月31日検証対象となった2025年3月期・2026年3月期の目標
決算期(事業年度の末日)の変更に関するお知らせ2026年5月15日決算期変更の理由
業績予想の修正に関する開示2026年7月22日・8月14日2026年12月期予想の引き上げ
中期経営計画(ローリングプラン)資料2026年8月14日2027年12月期・2028年12月期の目標
有価証券報告書2026年6月25日役員の状況、セグメント情報、減価償却費、財務諸表
会社概要・役員ページ—商号、設立、資本金、ローマ字表記
地域別売上高(IRサイト)—地域別の構成

出典の性質について

  • 賀氏の発言は、logmi Financeが公開した決算説明の書き起こしから引用しました。同記事には「提供:株式会社フェローテック」と明記されており、会社が提供した書き起こしです。話者名が「賀賢漢氏」と記載されているため、本人の発言として扱っています
  • 同じ書き起こしの後半は、財務担当の武田明取締役の説明です。決算期変更、指標の目標、利益率についての引用は武田氏の発言であり、記事中でその旨を明記しています
  • 同じ記事には質疑応答が17件掲載されていますが、公開されているのは質問の見出しのみで回答の本文は取得できなかったため、本記事では使用していません
  • 「全世界の7割の光モジュール」というシェアは、同社の資料に「当社推計」と注記があります。第三者による検証は確認できませんでした
  • 公式サイトの「社長メッセージ」は会社の生い立ちを述べたもので、署名者名と公開時期の記載がないため、本人の発言としては扱っていません

本記事は公開情報をもとにLeaders Journal編集部が独自に分析・編集したものです。