藤澤 信義Jトラスト株式会社 代表取締役社長 最高執行役員
LEADER 012
LEADER PROFILE

藤澤 信義

Nobuyoshi Fujisawa
Jトラスト株式会社
代表取締役社長 最高執行役員

3つ、必ずやると言った。

藤澤 信義

概要

公開されているインタビュー、有価証券報告書、会社発表資料をもとに、その人物のキャリアと考え方を整理しました。

Jトラストの藤澤信義氏は、2017年5月15日の決算説明会で、その期にやることを3つに絞って宣言しています。

「今期、我々が確実にやるという3つの目標、コミットは国際会計基準IFRSへの移行、設立以来最高益の計上、東証1部指定の実現、この3つです」

「確実にやる」「コミット」という言葉で、達成の可否が後から判定できる目標を3つ挙げた発言です。抽象的な方針ではなく、外から検証できる形で目標を示している点に、編集部は注目しました。

編集部が検証したのは、この3つがその後どうなったかです。

IFRSへの移行は、宣言した期から適用が始まっています。準備に「足掛け4年」を要したと本人が語っていた項目でした。

「設立以来最高益」は、宣言した期には届いていません。ただしこの目標には続きがあります。会社は2023年12月期の有価証券報告書で、前期(2022年12月期)の営業利益がIFRS移行以来で最大、2023年12月期の当期利益がIFRS移行以来で最大だったと記しています。宣言から5年後に、掲げた水準は記録されました。

東証1部指定は実現していません。同社は市場第二部にとどまり、2022年4月の市場区分の見直しでスタンダード市場へ移っています。

3つのうち2つは、時間差を伴いながら形になりました。その5年の間に何があったのかを、公開資料でたどります。

COMPANY
Jトラスト株式会社
SALES
1,242億6,500万円
EMPLOYEES
3,100名
PRESIDENT SINCE
2011年6月
01

経歴

プロフィール

項目内容
氏名藤澤 信義(ふじさわ のぶよし)
生年月日1970年1月17日
現職Jトラスト株式会社 代表取締役社長 最高執行役員
社長就任2011年6月(2020年3月に取締役会長へ。同年10月に社長へ復帰し現任)

※生年月日・肩書・略歴は2026年3月24日提出の有価証券報告書に基づきます。

経歴

時期内容
2007年8月かざか債権回収(現 パルティール債権回収)代表取締役会長
2008年6月Jトラスト 代表取締役会長
2010年6月Jトラスト 取締役
2010年10月Jトラスト 取締役最高顧問
2011年6月Jトラスト 代表取締役社長
2013年10月JTRUST ASIA PTE.LTD. 代表取締役社長(現任)
2015年6月Jトラスト 代表取締役社長 最高執行役員
2020年3月Jトラスト 取締役会長
2020年10月Jトラスト 代表取締役社長 最高執行役員(現任)

有価証券報告書の役員欄に記載された範囲です。同欄には、アドアーズ(現 KeyHolder)、親愛貯蓄銀行(現 JT親愛貯蓄銀行)、プロスペクト(現 Jトラスト)、エイチ・エス証券(現 Jトラストグローバル証券)など、多数のグループ会社・関係会社での役職も並んでいます。2007年以前の経歴は有価証券報告書に記載がなく、編集部では確認できていません。

編集部が注目した点。藤澤氏は2020年3月に取締役会長となり、7か月後の同年10月に社長へ復帰しています。会社はこの2回の異動について、それぞれ理由を開示しています。

会長就任時(2020年2月26日開示・2020年3月26日付)は、こう記されています。

「当社グループは、銀行業を中心とした持続的な事業拡大を目指して、日本国内外において積極的に企業価値の向上や事業基盤の強化等に取り組んでいるところであります。こうした取り組みをさらに強化し、推進するため、今般、代表取締役の異動を行うことといたしました」

社長復帰時(2020年9月23日開示・2020年10月30日付)は、こう記されています。

「新型コロナウィルス感染症の拡大の影響により世界各国で経済環境が急変し、先行き不透明感が増している中、当社としては、当社グループにおいて、各国の政治や経済の情勢、事業の収益性などを個別に精査し、事業環境の変化の大きい『ウィズコロナ』の経済に最適化した、手元流動性の確保と収益性のバランスに配慮した事業ポートフォリオの再編を模索する必要があると考えており、こうした取り組みをさらに強化し、推進するため、今般、代表取締役の異動を行うことといたしました」

いずれも、事業環境への対応として説明されています。会社は復帰にあたり、藤澤氏について「過去においても代表取締役として長らく当社グループの経営を牽引してきており」と記しています。

02

会社データ

項目内容
会社名Jトラスト株式会社(J Trust Co.,Ltd.)
本社東京都渋谷区恵比寿四丁目20番3号 恵比寿ガーデンプレイスタワー34階
設立1977年3月18日
資本金9,000万円
従業員数3,100名(連結)/47名(単体)(2025年12月31日現在)
営業収益1,242億6,500万円(2025年12月期・連結)
総資産1兆3,190億7,200万円(2025年12月31日現在)
報告セグメント日本金融/韓国金融/東南アジア金融/不動産/投資

※設立・本社・資本金は公式サイトの会社概要、従業員数・営業収益・総資産・報告セグメントは有価証券報告書に基づきます。会計基準はIFRSです。

編集部が注目した点。有価証券報告書の沿革は、同社の出発点を「1977年3月 大阪市南区(現 中央区)に㈱一光商事を設立、中小企業及び個人事業主向けの商業手形割引及び手形貸付業務を開始」と記しています。大阪の手形割引業者として始まった会社が、いまは総資産1兆3,190億円、5つの報告セグメントを持つ金融グループになっています。一方で提出会社(単体)の従業員は47名です。持株会社としての本体を小さく保ち、事業は子会社側に置くという構造です。

03

人物の軌跡

「今期、我々が確実にやるという3つの目標、コミット」

2017年5月15日、2017年3月期の決算説明会での発言です。藤澤氏はその期に実行することとして、3つを挙げました。

「今期、我々が確実にやるという3つの目標、コミットは国際会計基準IFRSへの移行、設立以来最高益の計上、東証1部指定の実現、この3つです」

IFRSへの移行については、そこに至るまでの経緯をこう説明しています。

「まず国際会計基準IFRSですが、取り組みだしてから足掛け4年、こんなにIFRSに行くのに時間がかかっている会社はないのではないか、と考えています」「1年間準備を進め、第1四半期、今期からIFRS会計に移行できる、ということで発表させてもらっています」

利益の水準については、数字を2つ挙げています。

「次に、営業利益で設立以来最高益をだすこと、これも1つの目標なのですが、先ほども千葉があったように、66ページに最高益が137億円とあります。今期の予想は100億にしています。最高益ではないでないか、という話なのですが、この100億というのは営業利益というのは私が1年間何もせずに寝ていても出る数字、と見込んだ数字です」

編集部の見方。ここは基準を丁寧に分ける必要があります。藤澤氏が「設立以来最高益」として指した水準は営業利益137億円で、会社予想の100億円は、本人が「1年間何もせずに寝ていても出る数字」と説明した数字です。予想は目標ではなく、本人が示した下限にあたります。

編集部では、この3つを本記事の検証対象に置きました。いずれも、達成したかどうかを外から判定できる種類の目標だからです。会計基準の移行は開示で分かり、最高益は数字で分かり、市場区分の指定は取引所の記録で分かります。

「東南アジアのリテールファイナンスを制覇していこう」

同じ説明会で、藤澤氏はIFRSへの移行が事業戦略と結びついていることを説明しています。

「IFRS会計になると、日本の会計と違いのれんの償却を定期的に償却するということがなくなるので、他社も同じですが、より積極的なM&Aができるようになります。そうなれば、我々は東南アジアでリテールファイナンスを拡大させていくためのデポジットライセンスを積極的に取りに行き、東南アジアのリテールファイナンスというのを制覇していこう、という目標を持っております」

編集部の見方。会計基準の移行を、それ自体が目的ではなくM&Aを進めるための手段として位置づけている発言です。編集部では、3つのコミットのうちIFRS移行が最初に挙げられていた理由が、ここで説明されていると読みました。

なお、この時点で挙げられていた進出候補は「カンボジア、ラオス、べトナム、フィリピン、タイ、マレーシア、ミャンマー、スリランカ、インドネシア」でした。現在の報告セグメントにも「東南アジア金融事業」が残っています。

「成功するコツは『失敗から学ぶ』ということだと思います」

2017年10月に行われた創業手帳の取材での発言です。

「全体で見ると成功しているように見えるかもしれませんが、実は同じぐらい失敗もしています。ですが、失敗するたびに学習能力は高まっていて、『こういうケースは失敗するな』というアンテナは張れるようになってきました。成功するコツは『失敗から学ぶ』ということだと思います」

事業の選び方については、こう述べています。

「参入障壁が高く、みんなが気づいていない市場を狙うと、当然ながら競争相手も少ないです」「最初のうちはあんまり人に理解されなくても良いので、オリジナリティがあって、後から真似されないものであればうまくいく可能性は高まるんじゃないかと思います」

M&Aの進め方についても語っています。

「M&Aでは、売り手の心もちゃんと汲み取ってあげないといけません。うまく汲み取れないと、失敗する原因になります」「そういう相手の心を理解して、その思いに共感共鳴し、その後の経営に活かすように経営していかなければいけません」

編集部の見方。この取材は、3つのコミットを宣言した5か月後に行われています。「参入障壁が高く、みんなが気づいていない市場」という事業観は、同じ時期に語られた東南アジアへの展開とつながっています。

04

経営哲学

答え合わせ①:IFRSへの移行——宣言した期に実現

有価証券報告書(第42期)は、こう記しています。

「当社グループは、2018年3月31日に終了する連結会計年度からIFRSを適用しております。IFRSへの移行日は2016年4月1日であり、IFRS第1号『国際財務報告基準の初度適用』(以下、『IFRS第1号』という。)を適用しております」

藤澤氏が「今期からIFRS会計に移行できる」と述べたその期(2018年3月期)から、IFRSの適用が始まっています。なお移行日の2016年4月1日は、比較情報を作成する起点としての日付です。

編集部の見方。3つのうち、これは宣言どおりに実現しました。本人が「足掛け4年」「相当時間とお金がかかりました」と述べていた項目です。会計基準の移行は自社の意思と作業で完了できるもので、市況に左右されません。3つのコミットのうち、外部の環境に依存しない項目が、期限どおりに形になったという整理になります。

答え合わせ②:設立以来最高益——宣言した期と、その5年後

まず、宣言の対象だった2018年3月期の結果を、当時公表された決算短信(2018年5月14日)で確認しました。

項目2017年3月期2018年3月期前期比
営業収益664億53百万円762億66百万円+14.8%
営業利益6億6百万円23億55百万円+288.3%
税引前利益△4億33百万円4億16百万円—
親会社の所有者に帰属する当期損益△12億70百万円△7億31百万円—

※2018年5月14日公表の決算短信に基づきます。後年の有価証券報告書では、非継続事業への分類替えにより2018年3月期の営業収益が743億21百万円、税引前利益が28億98百万円と表示されています。本記事の答え合わせは、宣言と同じ時点の基準にそろえるため、当時の決算短信の数値で行いました。

営業利益は23億55百万円で、前期の6億6百万円から約3.9倍に増えました。税引前損益も損失から利益へ転じています。方向は改善しましたが、藤澤氏が挙げた137億円という水準には届いていません。

そして、この目標には続きがあります。会社は有価証券報告書(第48期)にこう記しています。

「当連結会計年度において、当社グループは、営業収益が過去最大となる114,279百万円(前年同期比39.3%増)を計上するなど順調な成長を遂げました。また、営業利益は、当社グループが2018年3月期に国際財務報告基準(以下、『IFRS』という。)に移行して以来、Nexus Bank株式会社(以下、『Nexus Bank』という。)の取得に伴う負ののれん発生益を計上した前連結会計年度に次いで、過去2番目となる8,059百万円(前年同期比44.8%減)となりました。さらに、親会社の所有者に帰属する当期利益は、Nexus Bankの吸収合併に伴い繰延税金負債6,548百万円を取崩したこと等により16,310百万円(前年同期比29.1%増)となり、IFRS移行以来、過去最大となりました」

営業利益の推移は次のとおりです。

決算期営業利益
2018年3月期(宣言した期・当時の開示)23億55百万円
2022年12月期145億89百万円
2023年12月期80億59百万円
2024年12月期63億51百万円
2025年12月期109億2百万円

※各期の有価証券報告書の連結損益計算書に基づきます。2022年12月期の営業利益にはNexus Bank取得に伴う負ののれん発生益が含まれます。非継続事業への分類替えにより、期をまたぐと表示が組み替えられる場合があります。

2022年12月期の営業利益145億89百万円は、藤澤氏が2017年に挙げた137億円を上回る水準です。会社はこの期を「IFRS移行以来で最大」と位置づけ、翌2023年12月期の当期利益163億10百万円を「IFRS移行以来、過去最大」としています。

編集部の見方。「設立以来最高益」は、宣言から5年後に記録されました。ここには2つの注記が必要です。第一に、137億円は2017年の説明資料に載っていた数字で、その後IFRSへの移行と連結範囲の変更があったため、単純な比較はできません。第二に、会社の説明によれば、2022年12月期の営業利益には企業取得に伴う負ののれん発生益が、2023年12月期の当期利益には繰延税金負債65億48百万円の取崩しが含まれます。

編集部では、この結果を「水準には到達したが、到達の道筋は2017年に説明されていたものとは異なる」と読みました。2017年に語られていたのは営業の積み上げによる最高益で、実際に記録されたのはM&Aに伴う会計上の利益を含むものです。もっとも、そのM&Aを可能にするための布石としてIFRS移行を挙げていたのは、藤澤氏自身でした。

答え合わせ③:東証1部指定——実現せず

有価証券報告書の沿革から、上場市場の変遷を確認しました。

時期内容
1998年9月大阪証券取引所市場第二部に上場
2013年7月東京証券取引所と大阪証券取引所の統合に伴い、東京証券取引所市場第二部に上場
2022年4月東京証券取引所の市場区分の見直しにより、市場第二部からスタンダード市場へ

沿革に、市場第一部への指定の記載はありません。同社は市場第二部にとどまり、2022年4月の市場区分の見直しでスタンダード市場へ移りました。

編集部の見方。東証1部指定は実現していません。なお2022年4月の市場再編で、「東証1部」という区分そのものがなくなりました。この項目については、目標を達成する機会が制度の側で終わっています。

答え合わせ④:5年の間に何があったか

宣言から最高益の記録までの推移を、有価証券報告書の【主要な経営指標等の推移】で確認しました。

この期間に決算期が変わっています。2019年5月13日に「決算期(事業年度の末日)の変更に関するお知らせ」が開示され、同年6月26日の定時株主総会で承認されました。3月期から12月期への変更で、理由は「営業収益の半分以上を海外子会社にて獲得しており、…ほとんどの海外子会社の決算期である毎年12月31日に決算期をそろえる」ためと記されています。移行期にあたる2019年12月期は9か月の決算です。

決算期営業収益税引前損益親会社の所有者に帰属する当期損益
2018年3月期(第42期)743億21百万円28億98百万円△7億31百万円
2019年3月期(第43期)749億35百万円△311億35百万円△361億7百万円
2019年12月期(第44期・9か月)247億28百万円△55億26百万円△32億60百万円
2020年12月期(第45期)393億87百万円△6億19百万円△53億42百万円
2021年12月期(第46期)423億25百万円58億99百万円11億23百万円

※有価証券報告書(第46期)の【主要な経営指標等の推移】に基づきます。

2019年3月期には361億7百万円の当期損失を計上しています。有価証券報告書はセグメント別の内訳として、東南アジア金融事業で177億12百万円(Jトラスト銀行インドネシアにおいて「不良債権を一括して処理したこと等により貸倒費用が増加」)、投資事業で205億68百万円(「現在係争中のJトラストアジアが保有するGLに対する債権の全額について貸倒引当金繰入額を計上」)を記しています。いずれも、過去の債権をまとめて処理したことによるものと説明されています。

黒字に戻ったのは2021年12月期です。その後の推移は次のとおりです。

決算期営業収益税引前利益親会社の所有者に帰属する当期利益ROE自己資本比率
2021年12月期(第46期)423億25百万円58億99百万円11億23百万円1.2%15.7%
2022年12月期(第47期)820億38百万円172億5百万円126億32百万円11.9%10.5%
2023年12月期(第48期)1,142億79百万円97億72百万円163億10百万円12.1%12.5%
2024年12月期(第49期)1,273億95百万円86億37百万円60億40百万円3.9%12.4%
2025年12月期(第50期)1,242億65百万円116億33百万円79億39百万円5.0%12.3%

※有価証券報告書(第50期)の【主要な経営指標等の推移】に基づきます。自己資本比率は親会社所有者帰属持分比率です。この会社は銀行業を連結しているため、この比率は事業会社の水準とそのまま比較できません。

編集部の見方。営業収益は5期で3倍近くに伸びています。423億円から1,242億円へ、M&Aを重ねながら規模を広げてきました。2017年に「より積極的なM&Aができるようになります」と語られた方向が、数字として現れています。一方で当期利益は期によって幅があり、ある期の水準がそのまま次の期に続く形にはなっていません。

現在の予想と、その扱い方

2026年12月期の会社予想と、中間期の実績を並べます。

項目通期予想中間期実績進捗率
営業収益1,300億円624億5百万円48.0%
営業利益116億円72億86百万円62.8%
税引前利益117億円77億2百万円65.8%
親会社の所有者に帰属する当期利益81億円61億28百万円75.7%

※通期予想は2026年2月13日公表(2025年12月期決算短信)、中間期実績は2026年8月7日公表の中間決算短信に基づきます。中間決算短信によれば、営業利益には不動産事業での固定資産売却益の計上が、中間利益には繰延税金負債の取崩しが含まれます。

中間期で通期予想の75.7%に達しています。それでも会社は予想を据え置いており、中間決算短信は「直近に公表されている業績予想からの修正の有無:無」と記載しています。理由についてはこう書かれています。

「当中間連結会計期間の業績は、概ね計画を上回って推移しておりますが、現時点において、2026年12月期の連結業績予想につきましては、2026年2月13日の『2025年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結)』にて公表いたしました通期の連結業績予想数値から変更はありません」

編集部の見方。計画を上回って推移していることを会社が認めながら、予想は動いていません。編集部では、この判断と2017年の発言との関係を、公開資料からは確認できませんでした。進捗率が高く出ている要因に一過性の項目が含まれることも、あわせて記録します。

なお、同社が2025年12月期から2027年12月期の3か年で示している業績目標(2027年12月期の営業利益174億円など)について、編集部が確認できた説明の場では藤澤氏本人が登壇しておらず、担当役員が説明しています。本記事ではこの目標を藤澤氏の発言として扱いません。

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人物像

リーダーシップタイプ

検証可能な目標を公言するタイプ。2017年5月の説明会では、達成の可否を外部から確認できる3項目を、期の初めに挙げています。

強み・特徴(編集部分析)

  • 後から答え合わせができる形で目標を言う。「IFRSへの移行、設立以来最高益の計上、東証1部指定の実現」は、いずれも達成の可否を外部から判定できる項目です。抽象的な方針ではありません。
  • 自分で完結できる目標は、期限どおりに実行した。IFRSへの移行は「足掛け4年」を要したうえで、宣言した期から適用が始まっています。
  • 手段と目的をつなげて説明する。IFRS移行を「のれんの償却がなくなるので、より積極的なM&Aができるようになります」と説明し、その先に東南アジアでの展開を置いていました。会計基準の話を事業戦略として語っています。
  • 時間はかかったが、掲げた水準には到達した。「設立以来最高益」は宣言した期には届きませんでしたが、会社は2022年12月期の営業利益と2023年12月期の当期利益を、いずれも「IFRS移行以来で最大」と記しています。
  • 規模を伸ばしている。営業収益は2021年12月期の423億円から2025年12月期の1,242億円へ、5期で3倍近くになりました。

今後の焦点として読み取れる点(編集部分析)

  • 記録された最高益の中身は、2017年に語られていたものと構成が異なります。会社の説明によれば、2022年12月期の営業利益には企業取得に伴う負ののれん発生益が、2023年12月期の当期利益には繰延税金負債65億48百万円の取崩しが含まれます。営業の積み上げでどこまで届くかは、これからの数字で分かる部分です。
  • 利益の水準が期によって動いています。直近5期の当期利益は11億→126億→163億→60億→79億円。規模の拡大に対して、利益の安定度をどう高めるかが論点になります。
  • 東証1部指定は、制度の側で目標そのものがなくなりました。現在はスタンダード市場に上場しています。市場区分に関する目標を今後どう置き直すかは、公開資料からは確認できませんでした。
  • 3か年の業績目標(2027年12月期の営業利益174億円)は、藤澤氏本人が語った資料を編集部は確認できていません。説明の場に登壇していたのは担当役員でした。
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編集部総評

2017年5月15日の決算説明会で、藤澤氏は3つのことを「確実にやる」と宣言しました。国際会計基準IFRSへの移行、設立以来最高益の計上、東証1部指定の実現。達成したかどうかを、外から誰でも判定できる3つです。

編集部が注目したのは、この3つの性質の違いです。IFRSへの移行は、自社の意思と作業で完了できます。最高益は、市況と経営判断の両方に左右されます。東証1部指定は、取引所の審査という外部の手続きが要ります。藤澤氏は、自分でどこまで決められるかの度合いが違う3つを、同じ「コミット」という言葉で並べました。

結果も、その性質のとおりに分かれました。IFRSへの移行は、準備に足掛け4年をかけたうえで、宣言した期から適用が始まっています。最高益は、宣言した期には届かず、5年後に記録されました。東証1部指定は実現せず、2022年4月の市場再編で区分そのものがなくなっています。

5年という時間の使われ方に、この会社の性格が出ています。藤澤氏はIFRS移行の理由を「のれんの償却がなくなるので、より積極的なM&Aができるようになります」と説明していました。実際に記録された最高益には、企業取得に伴う負ののれん発生益が含まれています。最初に実現した目標が、5年後の目標到達の条件になっていたという関係です。

一方で、その到達の仕方は2017年に語られていたものと同じではありません。営業の積み上げで137億円に届くという話が、M&Aに伴う会計上の利益を含む形になりました。営業収益は5期で3倍近くに伸びており、規模の面では方向が一致しています。残っているのは、その規模から安定した利益をどう生むかという論点です。

2026年12月期の中間期実績は、通期予想の75.7%に達しました。それでも会社は予想を据え置き、「概ね計画を上回って推移しておりますが」と書いたうえで、期初の数字を保っています。

大阪の手形割引業者として1977年に始まった会社は、いま総資産1兆3,190億円の金融グループになっています。持株会社としての本体の従業員は47名で、事業は5つのセグメントに分かれた子会社側にあります。2017年に「制覇していこう」と語られた東南アジアは、いまもその1つとして残っています。

参考情報

本記事は公開情報をもとにLeaders Journal編集部が独自に分析・編集したものです。