濱田 宏一アンリツ株式会社 代表取締役 社長 グループCEO
LEADER 009
LEADER PROFILE

濱田 宏一

Hirokazu Hamada
アンリツ株式会社
代表取締役 社長 グループCEO

波を、敵と名指しした。

濱田 宏一

概要

公開されているインタビュー、有価証券報告書、会社発表資料をもとに、その人物のキャリアと考え方を整理しました。

アンリツの濱田宏一氏は、日経ESGの「未来戦略インタビュー」という同じ企画に、2022年1月から2026年2月まで5回登場しています。編集部が5本を並べて読んで気づいたのは、5年間ほぼ同じことを語っていることでした。

最初の回、2022年1月の発言です。「当社の事業は通信計測への依存度が高く、3Gや4Gなど携帯電話の通信技術が変わるたびに市場の影響を受けてきました。この状況から脱して飛躍するために、今後は次なる成長分野への投資を強化して収益の安定化を図り、30年度に2000億円企業を目指していきます」。

計測器メーカーの社長が問題として名指ししたのは、競合でも技術でもなく、自社の主力事業に伴う「波」そのものでした。本記事は、この宣言を有価証券報告書で突き合わせたものです。結果は、はっきりと分かれています。濱田氏が自分の名義で公表した最初の中期経営計画は、売上・利益・ROEのすべてが未達で終わりました。一方、事業の構造を示す指標では、目標として掲げた水準を目標年度の前に上回っています。ただしその中身は、新しい事業が伸びたことと主力事業が落ちたことの両方によるものでした。

COMPANY
アンリツ株式会社
SALES
1,174億6,200万円
EMPLOYEES
4,114名
PRESIDENT SINCE
2018年4月
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経歴

プロフィール

項目内容
氏名濱田 宏一(はまだ ひろかず)
生年月日1964年8月17日
現職アンリツ株式会社 代表取締役 社長 グループCEO
社長就任2018年4月(就任時53歳)

※生年月日・肩書は2026年6月23日提出の有価証券報告書および同社公式サイトの役員一覧(2026年6月25日現在)に基づきます。

経歴

時期内容
—1988年 東京電機大学工学部卒業
1988年4月アンリツ入社
2004年4月計測事業統轄本部 IPネットワーク事業部 第1開発部長
2011年4月Anritsu Company(米国)バイスプレジデント
2015年4月執行役員 計測事業研究開発総括 R&D本部長
2016年4月常務執行役員 計測事業グループ副プレジデント 計測事業本部長
2017年4月専務執行役員 計測事業グループプレジデント
2017年6月取締役
2018年4月代表取締役社長
2019年4月グループCEO(現)

学歴は日経ESGのインタビュー記事に基づくもので、有価証券報告書には記載がありません。1988年4月の入社以降の経歴は有価証券報告書の記載どおりです。

編集部が注目した点。この経歴には、通信計測の外側がほとんどありません。IPネットワークの開発部長、米国子会社のバイスプレジデント、計測事業のR&D本部長、計測事業グループのプレジデント。主力事業の内側だけを30年歩いてきた人物が、社長になってから主力事業への依存を問題として名指ししていることになります。

なお、前任の社長は橋本裕一氏です。2018年2月23日付の「代表取締役の異動に関するお知らせ」で、橋本氏が代表取締役会長 グループCEOに、濱田氏が代表取締役社長に就くことが公表されました。会社は異動の理由を「新しい経営体制の下で、更なる収益力、成長力の向上とコーポレートガバナンスの強化を期すものであります」と説明しています。濱田氏がグループCEOを兼ねるのは、社長就任から1年後の2019年4月です。この1年のずれが、後述する答え合わせで意味を持ちます。

02

会社データ

項目内容
会社名アンリツ株式会社(ANRITSU CORPORATION)
本社神奈川県厚木市恩名五丁目1番1号
創業1895年(明治28年)
資本金192億1,900万円(2026年3月31日現在)
従業員数4,114名(連結)/1,734名(単独)(2026年3月31日現在)
売上収益1,174億6,200万円(2026年3月期・連結)
報告セグメント通信計測/PQA(食品・医薬品の品質保証)/環境計測

※創業・資本金・従業員数は公式サイトの会社概要、売上収益と報告セグメントは有価証券報告書に基づきます。

編集部が注目した点。有価証券報告書の沿革は、この会社の出自を2つの系譜として記しています。1895年創業の共立電機(有線通信機の先駆)と、1900年設立の安中電機製作所(無線通信機の始祖)が1931年に合併して「安立電気株式会社」となり、1950年に企業再建整備法に基づく第二会社として再発足した、と。社名が現在の「アンリツ株式会社」になったのは1985年10月です。2026年3月期は第100期にあたり、この期の1株当たり配当額には創業130周年記念配当4円が含まれています。

03

人物の軌跡

「私が入社した約30年前から当社はずっと年間売り上げ1000億円前後で奮闘してきました」

2024年2月の取材での発言です。濱田氏は続けて「現状を続ける限り、これ以上の成長は望めません。そこで、『30年に売上高2000億円』という目標を掲げました」と述べています。

編集部で売上収益の推移を確認しました。濱田氏が社長に就任する直前の期から、直近までの9期です。

決算期売上収益営業利益営業利益率
2018年3月期859億6,700万円49億1,200万円5.7%
2019年3月期996億5,900万円112億4,600万円11.3%
2020年3月期1,070億2,300万円174億1,300万円16.3%
2021年3月期1,059億3,900万円196億5,100万円18.6%
2022年3月期1,053億8,700万円164億9,900万円15.7%
2023年3月期1,109億1,900万円117億4,600万円10.6%
2024年3月期1,099億5,200万円89億8,300万円8.2%
2025年3月期1,129億7,900万円121億2,400万円10.7%
2026年3月期1,174億6,200万円148億2,800万円12.6%

※国際会計基準(IFRS)による連結数値です。

9期の売上収益は、最小859億円から最大1,174億円の範囲に収まっています。「1000億円前後」という表現は、実際の数字と合っています。濱田氏が入社した1988年当時の売上高は、編集部が確認できた開示資料の範囲では追えませんでした。ただし直近の2026年3月期は、この9期で最も高い水準です。

「4Gや5Gなど新しい通信規格が現れるたびに業績が上がり、それが一段落すると下がります」

同じ2024年2月の取材で、濱田氏は「目的は会社を大きくすることではありません」と前置きしたうえでこう語り、「それに応じて株主の期待や社員のモチベーションも上下してきました。このジレンマを脱し、持続的かつ着実に成長していける企業へ生まれ変わります」と続けています。

編集部の見方。上の表を売上ではなく営業利益で読むと、この説明の意味が変わります。9期の売上収益は最小859億円・最大1,174億円で、最大値が最小値を36.6%上回る幅にとどまります。同じ9期で、営業利益は49億円から196億円へ4.0倍になり、そこから89億円へ54.3%減りました。売上の幅が4割弱にとどまる間に、利益は4倍と半分の間を往復していたことになります。「波がある」という説明は、売上よりも利益に強く現れていました。

もう一点、編集部が確認したのは「株主の期待も上下してきました」という部分です。

決算期1株当たり配当配当性向ROE
2021年3月期40円40.0%15.8%
2022年3月期40円29.3%11.5%
2023年3月期40円53.2%8.0%
2024年3月期40円65.3%6.3%
2025年3月期40円68.4%7.4%
2026年3月期50円54.5%9.1%

利益が半分以下に落ちた局面でも、配当は40円で5期続けて据え置かれています。その結果、配当性向は29.3%から68.4%まで上がりました。編集部では、株主に向けては「波」を配当性向の側で吸収してきたと読みました。中期経営計画GLP2026は株主還元の方針として「配当性向50%以上を目指す」を掲げていますが、この数字は2024年3月期から3期連続で50%を超えています。

「19年に社長直属の『経営企画室』を設置しました。……全員が2年間で何らかの成果をあげて事業部へ戻っています」

2024年2月の取材で、変革の具体策として語られた言葉です。濱田氏は「各事業部からイノベーションへの意欲が強い人を集め、任期を2年と決めて新たな挑戦をしています。挑戦ですから、成功も失敗もあります」と述べ、その成果として障がい者雇用の子会社「ハピスマ」の設立と、高砂製作所の買収を挙げています。

編集部の見方。この発言のうち「全員が成果をあげた」という部分は、公開情報からは検証できません。人事の内部評価は開示されないためです。編集部が確認できたのは、挙げられた個々の案件と、そこから生まれた事業の輪郭です。

ハピスマの設立は2021年9月です。濱田氏は2022年1月の取材で、その経緯をこう説明しています。「技術的な職場が多いため雇用率を上げるのは難しいだろうと思っていたところ、テレビでIT企業の特例子会社であるリンクラインという企業を知りました。(中略)すぐに同社にうかがって社長に相談したところ協力を得られることになり、21年9月にハピスマを設立しました」。

高砂製作所については、2021年7月30日に株式取得を決議し、2022年1月4日に取得を完了しています。会社の発表資料は、NECが保有する発行済株式の99.7%を取得したと記し、目的を「業界屈指の高電圧・大電流・大容量の電気エネルギー制御技術や業界を牽引するお客さまとの取引関係を持つ高砂製作所を、この分野を開拓するための中核と位置づけ」と説明しています。取得価額は、編集部が確認した2件の発表資料には記載がありませんでした。

より確実な検証材料は、セグメントの構成そのものです。濱田氏は2022年1月の取材で「環境という観点で測定を行う環境計測という新部門を立ち上げるなどESGの視点でビジネスを広げていく方針です」と語っていました。この環境計測は、2024年3月期から「その他の事業」を離れて報告セグメントになっています。

決算期環境計測の売上収益
2024年3月期74億円
2025年3月期85億4,500万円
2026年3月期107億8,700万円

語られた新部門は、発言から2年余りで報告セグメントとして独立し、2026年3月期に売上収益100億円を超えました。

04

経営哲学

答え合わせ①:公表名義が異なる2つの計画で、結果が正反対に分かれた

濱田氏の在任期間は、3つの中期経営計画にまたがります。編集部が有価証券報告書と公表資料で目標と実績を突き合わせた結果が下の表です。

計画対象期間最終年度目標実績結果
GLP20202018〜2020年度2021年3月期売上収益1,050億円/営業利益145億円/営業利益率14%/ROE12%1,059億円/196億円/18.5%/15.8%すべて達成
GLP20232021〜2023年度2024年3月期売上収益1,400億円/営業利益270億円/当期利益200億円/ROE15%1,099億円/89億円/76億円/6.3%すべて未達
GLP20262024〜2026年度2027年3月期売上収益1,400億円/営業利益200億円/当期利益150億円/ROE12%進行中(2026年3月期=1,174億円/148億円/116億円/9.1%)—

※GLP2020の目標値と実績は2021年3月期の有価証券報告書の記載(業績連動報酬の評価指標として掲げた連結目標値)に基づきます。GLP2023・GLP2026の目標と実績は各期の有価証券報告書に基づきます。

達成率で見ると、GLP2023の落差の大きさが分かります。売上収益は目標の78.5%、営業利益は33.3%、当期利益は38.4%でした。会社自身も有価証券報告書に「GLP2023での計画最終年度(2024年3月期)目標として当初掲げていた目標は未達となりました」と明記しています。

編集部がもう一つ確認したのは、それぞれの計画を誰の名義で公表したかです。GLP2020は2018年4月27日に公表されており、その資料の名義は、当時代表取締役会長 グループCEOであった前任の橋本裕一氏です。濱田氏が社長に就いた26日後にあたり、濱田氏がグループCEOを兼ねるのはその1年後の2019年4月です。一方、GLP2023は2021年4月27日に「濱田宏一 代表取締役社長」の名義で公表されています。

つまり、全項目を達成した計画は前任者の名義で公表されたものであり、全項目が未達となった計画は濱田氏自身の名義で公表された最初の計画でした。

ただし、この違いは「計画を誰が策定したか」の所在を示すもので、達成や未達の責任がそのまま名義の側にあるという意味ではありません。GLP2020の対象期間である2018〜2020年度の3年間は、すべて濱田氏が社長を務めた期間にあたり、うち2年間はグループCEOも兼ねています。達成を前任者だけの成果とも、未達を濱田氏個人だけの責任とも、公開情報からは断定できません。編集部が事実として示せるのは、自ら名義を持って掲げた最初の目標が、全項目で届かなかったという点までです。

答え合わせ②:未達だった売上目標は、そのまま3年後ろにずらされた

GLP2023の結果を受けて策定されたGLP2026の目標を、前の計画と並べます。

指標GLP2023目標(2024年3月期)実績GLP2026目標(2027年3月期)
売上収益1,400億円1,099億円1,400億円(据え置き)
営業利益270億円89億円200億円(引き下げ)
当期利益200億円76億円150億円(引き下げ)
ROE15%6.3%12%(引き下げ)

売上収益1,400億円という数字は、そのまま3年後ろにずらされています。一方、営業利益は270億円から200億円へ、ROEは15%から12%へ引き下げられました。編集部では、この組み合わせを「規模の目標は下げず、そこから得る利益の期待値だけを現実に寄せた」と読みました。

未達の中身も確認しました。通信計測事業は目標1,000億円に対し実績710億円で、単独で290億円届いていません。全社の未達は約300億円ですから、これに近い規模です。ただし全社目標とセグメント目標では集計の範囲が違うため(環境計測にはこの計画での目標がありません)、単純な内訳として足し合わせられる関係ではありません。一方、食品・医薬品向けのPQA事業は目標270億円に対し253億円で、達成率93.7%でした。未達は事業全体に等しく広がったものではなく、主力の通信計測に集中していました。

答え合わせ③:構造の指標は目標水準を超えたが、上昇の半分は主力の落ち込みだった

GLP2026の基本方針には、数値目標とは別に「2026年度(2027年3月期)の営業利益の25%を通信計測事業以外で創出」という項目があります。これは「波から脱する」という宣言を、そのまま指標にしたものです。

編集部が有価証券報告書のセグメント情報から4期分を計算した結果が下です。

セグメント2023年3月期2024年3月期2025年3月期2026年3月期
通信計測108億7,400万円75億4,400万円83億7,500万円107億8,200万円
PQA13億3,100万円12億9,500万円28億3,600万円33億1,800万円
環境計測5,100万円5億3,700万円9億円8億5,000万円
3事業の合計122億5,700万円93億7,600万円121億1,100万円149億5,000万円
通信計測以外の比率11.3%19.5%30.8%27.9%

※各期の営業利益。GLP2026の対象期間は2024年度(2025年3月期)から2026年度(2027年3月期)までです。

比率は3期で11.3%から30.8%へ上がり、GLP2026の初年度である2025年3月期の時点で、すでに目標の25%を上回っていました。2026年3月期は27.9%へ下がりましたが、25%は維持しています。

編集部が注目したのは、比率が上がった中身です。2023年3月期から2025年3月期にかけて、通信計測以外の営業利益は13億円から37億円へ増えています。ただし同じ期間に、通信計測の営業利益は108億円から83億円へ減りました。比率の上昇は、新しい事業が伸びたことと、主力が落ちたことの両方によって起きています。

このことは、2026年3月期に比率が下がった理由からも確認できます。通信計測の営業利益が83億円から107億円へ回復したため、分母が大きくなって比率は27.9%へ下がりました。この目標は比率で置かれているため、主力事業が好調な年ほど達成が遠のく性質を持っています。編集部では、この比率だけを「構造が変わった証拠」と読むのは早いと考えました。

なお、会社はこの25%の算定根拠を開示していません。上の比率は、報告セグメント3事業の営業利益合計を分母として編集部が計算したものです。会社の基準で達成と判定されるかどうかは、編集部では確認できていません。

答え合わせ④:投資は、半分が最終年度に残っている

GLP2026の基本方針の1つ目は「成長投資に400億円以上(M&A+設備投資)」です。計画の2年目が終わった2026年2月の取材で、濱田氏はこう述べています。

「26年までの3年間で400億円の設備投資やM&A(合併・買収)を計画しており、これまで約200億円の投資を行いました。残る約200億円は、6G関連ビジネスや食品検査ビジネス、医薬品検査ビジネスの加速に向け、M&Aを実施していきます」。

3年間で400億円のうち、約半分が最終年度に残っていることを、本人が公の場で説明していることになります。この間に実行された買収として有価証券報告書の沿革に記載があるのは、2022年1月の高砂製作所(GLP2023期間中)と、2025年10月のDEWETRON GmbH(オーストリア)の2件です。約200億円の内訳は、編集部が確認した開示資料からは分かりませんでした。

5年間、同じ言葉を繰り返している

最後に、5回のインタビューで濱田氏が語った内容を並べます。

掲載発言(抜粋)
2022年1月「当社の事業は通信計測への依存度が高く、3Gや4Gなど携帯電話の通信技術が変わるたびに市場の影響を受けてきました。この状況から脱して飛躍するために……30年度に2000億円企業を目指していきます」
2023年2月「中期経営計画では、『電気自動車(EV)、電池測定』『ローカル5G』『医療・医薬品』『光センシング』の4分野を、次の3カ年での成長分野と位置付けました」
2024年2月「私が入社した約30年前から当社はずっと年間売り上げ1000億円前後で奮闘してきました。現状を続ける限り、これ以上の成長は望めません」
2025年2月「23年度の売上高は1100億円で、ここ数年は同じ水準で推移しています。大きな目標を掲げた背景には、会社の発想を変えるという目的があります」
2026年2月「主力である通信計測事業のモバイルビジネスでは、27年後半から立ち上がると予測される第6世代移動通信システム(6G)の準備を進めています」

編集部の見方。5年間で表現は変わっていますが、主張は変わっていません。特に2025年2月の「ここ数年は同じ水準で推移しています」は、目標未達が確定した直後の発言です。未達を外部環境の説明で終わらせず、「同じ水準にとどまっている」という言い方で現状を示している点を、編集部では特徴として捉えました。

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人物像

リーダーシップタイプ

構造改革型。個々の事業の伸長ではなく、業績が上下する構造そのものを標的に置いています。主力事業の内側でキャリアを積んだ人物が、その主力への依存を問題として設定している点が特徴です。

強み・特徴(編集部分析)

  • 問題の設定が一貫している。5年間、同じ問題(通信計測の波・1000億円前後の水準)を同じ言葉で語り続けています。目標未達の年もこの説明は変わっていません。
  • 宣言を組織の形に落としている。「環境計測という新部門を立ち上げる」(2022年1月)は、3年後に報告セグメントとして独立しました。「経営企画室」「社内大学A-SKILLs」「ハピスマ」も、いずれも発言に対応する組織が実在します。
  • 数字で語る。目標を「成長」ではなく2,000億円、25%、400億円という数値で置いています。2026年2月には投資の進捗を「これまで約200億円」と自ら開示しています。
  • 就任前と比べた実績は明確に伸びている。就任直前の2018年3月期と2026年3月期を比べると、売上収益は859億円から1,174億円へ36.6%、営業利益は49億円から148億円へ3.0倍、1株当たり配当額は15円から50円になりました(2018年3月期の配当額は2022年3月期の有価証券報告書の推移表で確認)。ただし2018年3月期は営業利益率5.7%と9期で最も低い期であり、比較の起点が谷にあたることは考慮が必要です。

課題として読み取れる点(編集部分析)

  • 自らの名義で出した最初の計画が全項目未達に終わっています。売上収益の達成率78.5%に対し、営業利益は33.3%でした。規模より収益性の未達が大きく、営業利益率は目標19%に対し8.2%でした。
  • 2030年度2,000億円までの距離が残っています。2026年3月期の1,174億円から4年で825億円の積み増しが必要で、年率に換算すると約14%です。直近9期で前期比14%以上伸びたのは2019年3月期(15.9%)の1期のみでした。
  • サステナビリティ目標の一部は未達が続いています。太陽光自家発電比率(PGRE 30)はGLP2023の目標13%以上に対し結果10.4%(参考値)、GLP2026の目標14%以上に対し2025年度実績12.9%(参考値)でした。一方、温室効果ガス(Scope1+2)は2021年度比23%以上削減の目標に対し31.0%削減で達成しています。
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編集部総評

濱田氏が名指しした「波」は、消えていません。営業利益は就任直前の49億円から196億円へ上がり、89億円へ下がり、148億円へ戻りました。5Gの需要が立ち上がった時期と重なる期間に4倍になり、その後半分以下になるという動きです。会社は有価証券報告書で、通信規格の世代交代に伴う需要の変動を業績の背景として説明しています。2026年3月期の売上収益1,174億円は在任9期で最高ですが、営業利益148億円は5G期の最高値196億円の75%にとどまっています。

一方で、変わったものもあります。2022年1月に「立ち上げる」と語った環境計測は報告セグメントになり、通信計測以外が生む営業利益の比率は、GLP2026の初年度から目標の25%を上回っています。ただしその比率の上昇は、新しい事業の伸びと主力の落ち込みの両方によるものでした。構造は動き始めているが、それを主力の回復と切り離して評価するには材料が足りず、規模の目標には届いていない。これが2026年3月期時点の答えです。

編集部が最も注目したのは、濱田氏が自分の計画の未達を、外部環境の説明で片づけていないことです。5Gのピークが来なかったという事情は会社も有価証券報告書に記していますが、濱田氏本人は2025年2月の取材で「ここ数年は同じ水準で推移しています」と述べ、そのうえで「大きな目標を掲げた背景には、会社の発想を変えるという目的があります」と説明しています。目標を「達成すべき数字」ではなく「発想を変えるための装置」として語っているわけです。

GLP2026の最終年度は2027年3月期です。売上収益1,400億円という数字は、前の計画から据え置かれたまま、残り1年で約225億円の積み増しを要する位置にあります。同時に、成長投資400億円のうち約200億円が未執行として残っています。据え置かれた目標に2度目の答えが出るのは、1年後です。

参考情報

参考にした公開情報

本記事は公開情報をもとにLeaders Journal編集部が独自に分析・編集したものです。